内容説明
立憲主義の意味を問う。いまなによりも問題となるのは、憲法と条約に掲げる諸権利を、裁判の方法によって法的に確保する可能性である。
目次
第1部 人権の思想史と実定法―「国」法学と「人」権(コトバとしての人権;「人」権の可能性と困難性)
第2部 実定法の保障する基本権(権利の諸類型;基本権論の言説空間;いくつかの今日的問題―二項対比のなかで考える;人権の宣言から裁判による基本権保障へ;基本権保障の「国際化」)
著者等紹介
樋口陽一[ヒグチヨウイチ]
1934年仙台生まれ、1957年東北大学法学部卒業。東北大学法学部教授、東京大学法学部教授、早稲田大学法学部教授などを経て、現在、日本学士院会員、フランス学士院準会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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無識者
12
基本権を下より進みて此をとりしものを快復的民権。君主宰相の恵与ものを恩腸的民権とする。自由民権運動、大正デモクラシーと基本権を快復的に獲得していった部分もあったが限定的であった。政治運営に関わる国家への自由は一定獲得したが男子普通選挙と同時に公職選挙法や治安維持法が成立した。国家からの自由まではいたらなず、アウトサイダーは許されなかった。2016/07/31
ヤギ郎
9
おもしろい一冊だ。比較法のようなアプローチをとりながら,日本の法体系,特に憲法の理論的整理を行っている。(そもそも,日本の法律は外国由来のものが多いので,外国の記述が多いのは仕方がない。)フランス・ドイツ・アメリカ・イギリスとそれぞれの法体系や人権の理解を紹介しており,そこでしっかり法典にあたっているのは素晴らしい。国法学は,即戦的な法学ではないが,法学を理解するための土台となっていると思う。何度も読みたい。2018/04/11
無識者
7
再読したい本。おそらく実務的な勉強にはあまり向いてないかもしれないが、人権というものの形成に興味がある場合役立つ。また公が自由を確保するのにどの程度踏み込むことができるのだろうと考えさせられた。2015/07/14
D.Okada
6
何冊か憲法の本を読んできたけれど、本書は特徴的。細かい条文の解釈とか学説とかを列挙するのではなくて、ある種の「理念型」を提示した上で検討がなされているので、副題は「人権原論」だけれど、「人権の思想史」と言ってもいいのかもしれない。 独占の「自由」に対する「公序」の強制によって創出された、独占形成の傾向を内包する「市場」に対して、公序を強制し続けることによって、「自由」な「市場」を回復・維持するとして、市場の独占についての思考枠組みを、労働市場、メディアに転用するのも、筆者の独特な観点かと思う。2014/01/14
ただの人間
1
憲法記念日に一気に読了(もちろんもっと前に読んでおきたかったが)。「人権」という言葉の持つ、あるいは持たされてきた意味を徹底して自覚的に精緻に分析する第一部は、広く言葉の意味の整理を試みるにあたっての模範とすることができるように感じた。それ以外の叙述も、トクヴィル=多元主義、ルソー=一般意思モデルの対置や国家による個人の中間団体からの解放など、樋口憲法学の考え方を前面に押し出しつつ主に英米独仏を視野に入れた考察を行なっており、非常に読み応えがあった。2020/05/03