内容説明
一九五五年に刊行された、串田孫一の最初の山の本。ひとたび遠ざかることによって純化され、結晶した「若き日の山」は、山の文学に新たな地平を開いた。詩人の愛情、哲学者の思索、登山家の情熱をもって綴った三十六篇の美しいエッセイに、戦前の山の記録を加え、待望の文庫化。
目次
1(馴鹿の家;風の伯爵夫人 ほか)
2(山頂;氷の岩峰 ほか)
3(薔薇の花びら;富士山 ほか)
4(舊い山脈;高原の小鳥 ほか)
著者等紹介
串田孫一[クシダマゴイチ]
1915(大正4)年東京生まれ。詩人、哲学者、随筆家。東京帝国大学文学部哲学科卒。詩誌「冬夏(とうげ)」を創刊、小説などを発表する。詩誌「歴程」「アルビレオ」に参加。中学時代から登山を始め、のちに東京外国語大学教授として教鞭をとるかたわら山岳部長に就任。登山や植物など自然の風物をめぐる詩的な随想を多数執筆。1958年、山の芸術誌「アルプ」を創刊し、83年に300号で終刊するまで責任編集者を務めた。著作は膨大な量にのぼり、山岳文学、画集、小説、人生論、哲学書、翻訳など多岐にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つちのこ
2
初出は1955年に河出書房より。私が持つ著者のイメージは山の文学者としてあったが、巻末の履歴を見ると、早熟な登攀者の姿が浮かび上がる。わずか15歳で戦前の剣岳八ッ峰、小黒部谷。17歳で本書にも収録された谷川岳の堅炭岩KⅢの初登攀をしている。戦後は本業の東京外大教員以外に音楽、絵、詩作、映画製作等もした多彩で博識の人である。処女作となった本作はどこから読んでも肩がこらない文章で、夜が更けるのを忘れてその詩的世界にどっぷりと浸かれば、至福の一夜を過ごすこと請け合いである。2020/01/16