内容説明
臓器移植、人工臓器、遺伝子治療…医療技術の進歩は、さまざまな病気の治療を可能にした。なかでも脳死臓器移植技術の進歩は著しいが、一方で、この技術は、私たちの死生観を覆す大きな問題も提起した。脳死後、臓器摘出中に動いたり、脳死状態で数十年も生き続けたりする人を前に、「死」をどう捉えればよいのだろうか。脳死臓器移植の問題点に真正面からぶつかり私たちに鋭く問いかける。
目次
序章 反・脳死臓器移植の思想
第1章 臓器移植法・改定案の問題点
第2章 死とはどういうことか
第3章 脳死はペテンである
第4章 死の自己決定権について
第5章 人工妊娠中絶と脳死
第6章 臓器移植は欠陥医療である
第7章 ドナーとレシピエントの非対称性
第8章 ドナーになるのは善行なのか
第9章 アンチ・コントロールの思想
第10章 ポスト脳死臓器移植の時代―二十一世紀の医療の問題点
著者等紹介
池田清彦[イケダキヨヒコ]
1947年、東京生まれ。東京教育大学理学部卒業、東京都立大学大学院生物学専攻博士課程修了。早稲田大学国際教養学部教授。構造主義科学論、構造主義生物学の見地から、多彩な評論活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やっさん
115
★☆ 薬剤師の友人からの推薦書。読んで字の如く脳死臓器移植の是非を掘り下げた一冊だが、わずか6頁の〝まえがき〟で全ての主張を終えている印象。2019/10/11
James Hayashi
23
早大国際教養学部教授、00年に『臓器移植 我、せずされず』を加筆修正したもの。 そもそも痛みなど脳で感じるもの。脳死であれば臓器取り出しのための手術は痛くも痒くもないのでは? 伊藤博文を暗殺した安重根を例に出したり、日本で交通事故で毎年1万人がなくなっていることに対し、自動車業界を無くさないという極端な天秤をかけるなど表現が極端である。同意できるのは現在は過渡期であり将来は再生医療遺伝子医療へ進んでいくこと。2020/10/10
shimashimaon
5
巻末の年表は2006年5月に国内45例目の脳死移植が実施された内容で終わっていますが、日本臓器移植ネットワークによると1995年4月から2021年9月末までに773人の脳死下臓器提供が行われたとのことです。この内2010年の法改正後は687人となっています。私がどのように考えるかは私自身と家族の問題だと思っていましたが、村上陽一郎氏のコメントを引きながら『逃避』と『断念』の間にある傲慢さに気付くべきだという指摘にはどきりとしました。著者の構造主義生物学は仏教の「縁起」「依他起承」を想起させて面白いですね。2022/08/13
lily
5
「ほんまでっかTV」の軽快な語り口で有名な著者による反脳死・臓器移植論。大前提として、脳死後の臓器移植は「他者の死を待ち願う欠陥医療」であるという点を指摘している。また、経緯を見ても脳死という言葉は科学技術の発展と臓器移植を推進するために産まれた言葉であり、脳死を一律で人の死とする改正臓器移植法は、本人の意思が不明な場合も臓器提供に同意したと「みなされる」可能性がある悪法だという指摘には説得力があった。まだまだ知識不足。関連書籍を読み深めたい。2017/01/20
春色
0
ううーん。何かなぁ。噛み合わないなぁ。私は「基本的に」立花隆と同じく唯脳論者なのだよ。作者の言うことに全部マルッと同意は出来ない。でもどこが私の感覚とズレているのかを言葉にするのは難しい。まぁ、読んでみてくださいな、と。2006/09/14
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