内容説明
今は都会で暮らしている人々も、多くはルーツを近世(江戸時代)の家と村にもちます。では、その時代の家と村に生きた我々の先祖たちは、どのような人生観をもち、どのような生活スタイルを築き、どのような生活文化をはぐくんだのでしょうか。そして、我々の生きている時代と生き方に照らし合わせてみるとき、そこにいったい、何がみえてくるでしょうか。近世の家と村に生きた男女それぞれのライフサイクルをたどりながら、当時の村人たちの生と死をめぐる問題を考えてみましょう。ライフサイエンスとしての歴史学。本書はそのささやかな試みです。
目次
ライフサイエンスとしての歴史学
1 近世の家と村
2 子どもの誕生と育児
3 家と村における教育
4 結婚・相続と家長・主婦の役割
5 老いと死
著者等紹介
大藤修[オオトウオサム]
1948年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程中退。専攻、日本近世史・史料学。現在、東北大学大学院文学研究科教授、博士(文学)
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感想・レビュー
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まいこ
3
大人になっても離家しない者や、離婚して家に戻った者は「厄介」と呼ばれ、公的文書にも「厄介」と記されていたことを知った。再婚させて家を出すことを「厄介払い」と呼んでいた。普段口にしている「厄介」は、パラサイトシングからきているんだろうか?それにしても、「厄介」は死後「無縁仏」にされたという。一般的なライフサイクルから外れた者はそういう処遇だったと思うと、窮屈な生活だったんだろうなあと思う。2014/08/09
つきもぐら
2
男性中心主義の基盤は近世江戸時代に固まったそうですが、なお詳しく知りたくて本書を手に取りました。生老病死の本来の姿を垣間見ることができます。特に気になるところが「若者組」と「娘仲間」という若者組織が性習俗の中継地点として機能したこと。京極夏彦のミステリー小説『絡新婦の理』で語られる姉家督という招婿婚制度と夜這いの習俗を合わせて読むと一層面白いです。男と女が一夜を共にする場が、社会構造や貨幣制度に影響を受ける点は示唆的。(間引きの罪業を母親一身に負わせるといった)本書で描かれる反省点は現代でもなお有効です。2016/08/07
sfこと古谷俊一
2
タイトル通り、近世の村人の一生について近年の知見を整理してあります。家制度が村落共同体の中で確立されていく経緯、捨て子や私生児も含めた子どもの扱われかた、若者組などの集団の教育機能と衰退、結婚と家を継ぐ条件の多様性、老人の扱い。2009/08/26
わ!
1
私は歴代を紐解くのが好きである。でも私の好きな歴史は、固有名詞のあまり出てこない歴史である。 つまり平安時代や江戸時代の一般の人が、朝目覚めて、まず一番に何をしたのか…とか、その時、何を考えていたのかとか、どんな一日を送ったのかとか、どんな一年、どんな一生涯を送ったのかという歴史である。この本には、ごくあっさりと、近世におけるこの辺りのことが書かれている。 ただやっぱり、何を考えていたのか…は、分からない。 これはその世界観をトレースして、その人になりきった想像で補うしかないのかもしれません。2021/11/17
こずえ
1
歴史系の人よか、社会学で生活の変遷について勉強したい人の入門書としておすすめ