出版社内容情報
著者は昭和19年10月,戦艦武蔵沈没に際し奇跡的に生還した.復員後天皇に対する自己の思いを日録の形で披瀝する.信仰と敬愛の念から戦争責任追及へ.後年わだつみ会の活動を通して持続された志は,いかにして形成されたか.
内容説明
著者はマリアナ、レイテ沖海戦に参加、昭和十九年十月の戦艦武蔵沈没にさいし奇跡的に生還した。復員後、天皇に対する自己の思いを昭和二十年九月から二十一年四月まで、日録の形で披瀝している。限りない信仰と敬愛の念から戦争責任追及へという天皇観の急激な変化。後年わだつみ会の活動を通して持続された志は、いかにして形成されたか。
著者等紹介
渡辺清[ワタナベキヨシ]
1925‐81年。静岡県生まれ。1941年高等小学校卒業後海軍に志願。42年戦艦武蔵に乗り組み、マリアナ、レイテ沖海戦に参加。武蔵沈没にさいし奇跡的に生還。45年復員。70年から日本戦没学生記念会(わだつみ会)事務局長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
無識者
19
戦前天皇を信じて疑わずに忠実な臣民として兵隊となる。奇跡的に復員するが、自分が命をささげてきたはずの天皇が何故かのらりくらりとのさぼっており、周囲も天皇は軍部の言いなりになっていたのだと受け入れてしまっている。しかし、開戦の際に判子を押したのは誰なのか、また8月15日に終戦をさせたのは誰なのか、もっと早く周旋させることができたのではないか、仮に軍部の暴走だとしてもその東条英機を任命したのは誰なのか?それが何故かうやむやにされてしまっている。そのことについて恨みつらみが書かれた手記である。2017/10/20
Toska
14
日記の形式で書かれているのはフィクションなのだろうが、復員直後の一兵士の心情として恐ろしいほどのリアリティを感じる。「敗残兵」としての鬱屈、辛く厳しい貧農生活、その中で折に触れ身体レベルで蘇る兵士の記憶(と水虫とインキン)。敗戦を前後に価値観を一変させた世間の軽薄さ、冷たさ。邪魔者扱いされる疎開者、性的な好奇の目で見られる戦没者未亡人。救いようもなく反目し合う農村と都会(「このさい町場のやつらをもう少しきゅうきゅうの目にあわしておいたほうがいいずら」)。一人でも多くに読まれてほしい名著と思う。2024/07/28
YUTAKA T
11
大日本帝国の中心にいた限りなく尊い天皇陛下に全力で忠誠を捧げてきた作者であった。日本の敗戦となって、天皇陛下は本来ならば敵によって処刑されるか、そうでなけば敵の掌中に落ちる前に自決されるに違いないと思っていたが、そうでなかった。処刑もされず、自決なされるのでもなく、マッカーサーを訪問してマッカーサーと二人で写真に収まっている様子を見て、作者は限りない憤りを感じるところから始まる。日本の戦前、戦後の思想問題を考えるときに示唆するところが多い一冊。2021/09/21
Sumiyuki
9
良書。天皇を盲信していた一人の兵士が、天皇の無責任さに気付き、怒りを爆発させてから猛省するまでを当時の世情を交えて日記調で描く。@言うことと、やることのちがいに矛盾を感じないからこそ、かえって平気で人の上に立って立派なことを言っていられるのかもしれない。@戦争を否定しながら一方ではそれに参加したことでこころが救われる。@軍隊でもほんとうの恐ろしい敵は前方のアメリカ兵ではなく、自分のまわりにいる味方の古参の下士官や兵長たちだったが、それは娑婆でも変わりがないようだ。2019/01/24
ののまる
6
これはもう私の大切な本になった。昭和天皇読んだかな、てか復員兵の話、全部読めよ。2024/02/26
-
- 和書
- 沖縄の歩み 岩波現代文庫