内容説明
中国・雲南西北部のチベット族の家を訪ねると、必ずバター茶がふるまわれる。照葉樹林(常緑広葉樹林)で摘まれた茶葉、大地から汲み出した塩、そして地元で飼うウシの乳が、茶の味をかもし出し、銅製の薬缶で湯が沸かされる。茶葉と塩と銅、いずれも生態環境を変えながら生産され、遠く交易されてきた。茶葉と塩と銅、これらの物産をめぐる環境と交易の歴史をたどると、日本をも含む東ユーラシアという広がりが浮かび上がってくる。
著者等紹介
上田信[ウエダマコト]
1957年生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。専攻、中国社会史・生態環境史。立教大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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samandabadra
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他説がある中のひとつの可能性として紹介されたことですが、ペストが実は雲南起源で、茶畑の開墾のため病原菌を持っていたネズミと人間が接触し、そこでペストが人間に乗り移り、さらに、雲南を支配していた、モンゴル系の人がユーラシアを渡り、ヨーロッパにまで持ってきてしまい、14世紀、ヨーロッパで大流行し、人口の1/3が死に至るという説があるそうです。遊牧による影響はこんなに広い範囲で出るのかとびっくりしました。2013/07/02
†漆黒ノ堕天使むきめい†
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お茶の話から始まっているので面白さを感じた。 ~だから難しいそうに思わせない書き方は素晴らしい。
日暮里の首領様
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中国雲南省を中心とした「東ユーラシア」地域概念から、この地域の自然環境・人間社会を包含した「生態環境史」を叙述する。雲南は、標高や気候の違いから目まぐるしく異なる生態系が互いに接する「要」となっている。故に古来、チベットと漢民族世界、さらには中央アジアや東南アジアとの間の茶・馬・漢方薬の交易、塩や銅の採掘が行われてきた。その重要性故にモンゴル帝国は雲南を抑え、それはアジアにおける「交易の時代」の勃興へと繋がっていく…。/ 雲南における中華王朝の銅採掘管理が、江戸日本とも繋がっていたなどなど、各所面白い。2012/12/05