出版社内容情報
萩原 朔太郎[ハギワラ サクタロウ]
著・文・その他
内容説明
日本近代詩を新しい次元に導き、現代につづく詩の地平を切りひらいた日本を代表する近代詩人、萩原朔太郎の最晩年の自選アンソロジー。散文詩と抒情詩のなかから代表作一四一篇を選び出し、みずからの詩人としての終着点を総括した作品集。さらに散文詩自註としてみずからの詩的表現論を展開し、近代以降の詩にたいする問題提起をおこなった詩的遺言書。
目次
散文詩(ああ固い氷を破つて;婦人と雨;芝生の上で;舌のない眞理;慈悲 ほか)
抒情詩(漂泊者の歌;乃木坂倶樂部;珈琲店醉月;晩秋;昨日にまさる戀しさの ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
28
萩原朔太郎の最晩年の自選アンソロジーの中から「蟲」のみを「spotify さて、朗読しようかな〈佐野真希子/10分〉」で。昭和7年作。「鉄筋コンクリート」という語に取り憑かれる男の物語。その意味を求める神経症的な思考と行動。特別なストーリーがあるわけではないジャズのインプロビゼーションを聴く如き快感。「テツ、キン、コン」「~クリート」のリフが強烈印象。2024/12/17
しろ
3
真理へ潜り続ける萩原朔太郎。息継ぎのような表現が詩であった。 思想、哲学、何某、凝縮されていて、いつも頭上に曇天が見える私には行燈のような世界だった。「魂の秘密」という言葉が出てきたが、詩は人の魂の秘密だからこそ、慰めになるのだと、改めて考えさせられた。暗かろうとじめじめしていようと、だからこそ、私の人生には朔太郎の詩が必要だと強く思った。2018/02/18
miyuki
1
散文詩と抒情詩のふたつが併存している詩集。朔太郎の社会生活者としての関心の方向という意味で、この詩集はもっとよまれるべきだとおもうし社会不適合者が社会で生きるための助けとして、この本はもうすこし評価されてもよいのではないかと思う。いくつかの用字に関しては改められている部分があると、凡例のところで断られているが、原文を尊重してか、旧字旧仮名を用いた復刻は、なかなか手の込んだところであるとおもう。当時のモダニズムを感じるには、やはり旧漢字のほうが文体とあいまって、この詩集においては合っていると思う。2016/07/08