出版社内容情報
普通選挙が行われていても、特定政党や政治指導者の権力独占が続く政治体制を競争的権威主義体制とよぶ。これは権威主義から民主主義への体制移行期などに短期的にみられるに過ぎないとの見解がある一方で、決して短期間のみにとどまらず安定していることも珍しくない。競争的権威主義体制の安定性/不安定性は何に由来するのか、またその概念そのものが実際の対象分析においてその程度有用なのか、といった視点から考察する。
内容説明
競争的権威主義の下では、複数政党や公職者の選挙が存在する一方で、選挙の方法や結果に関する操作などにより特定の政治勢力の権力独占が続く。このような政治体制は安定しているのか、不安定なのか。そもそも独自の特徴を示す体制カテゴリと考えるべきか。
目次
1 選挙権威主義からの民主化―議院内閣制の脅威?
2 権威主義体制下の執政制度の選択と変更―「正統性の二元性」と「指導者の二元性」への視点
3 権威主義的政党支配下におけるゲリマンダリング―GISを用いたマレーシアの事例分析
4 タイにおける半権威主義体制の再登場―連続性と不連続性
5 「競争的権威主義」と「委任型民主主義」の狭間で―ラテンアメリカの事例から考える
6 組織化された野党不在の下の競争選挙実施による支配政党の崩壊―ソ連とメキシコの比較分析
7 ポルトガル「立憲的独裁」の成立(1926‐33年)
8 戦前日本における民主化途上体制の崩壊―競争的権威主義体制論への意味