数学に魅せられて、科学を見失う - 物理学と「美しさ」の罠

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数学に魅せられて、科学を見失う - 物理学と「美しさ」の罠

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  • サイズ 46判/ページ数 315p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622089810
  • NDC分類 421
  • Cコード C1040

出版社内容情報

物理学の基盤的領域では30年以上も、既存の理論を超えようとして失敗し続けてきたと著者は言う。実験で検証されないまま理論が乱立する時代が、すでに長きに渡っている。それら理論の正当性の拠り所とされてきたのは、数学的な「美しさ」や「自然さ」だが、なぜ多くの物理学者がこうした基準を信奉するのか? 革新的な理論の美が、前世紀に成功をもたらした美の延長上にあると考える根拠はどこにあるのか? そして、超対称性、余剰次元の物理、暗黒物質の粒子、多宇宙……等々も、その信念がはらむ錯覚の産物だとしたら?
研究者たち自身の語りを通じて浮かび上がるのは、究極のフロンティアに進撃を続けるイメージとは異なり、空振り続きの実験結果に戸惑い、理論の足場の不確かさと苦闘する物理学の姿である。「誰もバラ色の人生なんて約束しませんでしたよ。これはリスクのある仕事なのです」(ニマ・アルカニ=ハメド)、「気がかりになりはじめましたよ、確かに。たやすいことだろうなんて思ったことは一度もありませんが」(フランク・ウィルチェック)
著者の提案する処方箋は、前提となっている部分を見つめ直すこと、あくまで観測事実に導かれること、それに、狭く閉じた産業の体になりつつあるこの分野の風通しをよくすることだ。しかし、争点はいまだその手前にある。物理学は「数学の美しさのなかで道を見失って」いるのだろうか?本書が探針を投じる。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

absinthe

171
数式を使わずに数学を語る。巨大粒子加速器の実験結果は、近年の物理学者の予想を裏切り続けている。学者が信じ続けてきた超対称性は純粋に数学として美しく、物理学に残る様々な散らかった奇妙な定数を様々に結び付け”美しく”まとめ上げてくれる。超対称性は予想からいつしか定説となっていた。しかし超対称性が存在するなら発見されなければならない粒子は、予想されたエネルギー内に一つも見つからない。超対称性の美しさは罠なのか。多宇宙のような宇宙モデルは敗北なのか。研究者としての語りと高名な学者へのインタビュ。2021/09/10

やいっち

77
フランクフルト高等研究所(FIAS、ドイツ)研究フェローである著者が世界の名立たる理論家らにインタビューしての記事。筆者は女性かな。「研究者たち自身の語りを通じて浮かび上がるのは、究極のフロンティアに進撃を続けるイメージとは異なり、空振り続きの実験結果に戸惑い、理論の足場の不確かさと苦闘する物理学の姿」が浮かび上がる。2021/06/13

CCC

9
自然は美しいはずという信念はいつの時代もバイアスになり、良くも悪くも科学の理論構築に影響をもたらしてきた。しかし科学を進歩させた新しい有効な理論は常に美しいものとは限らなかった。だが現在の基礎的な物理学は美しい理論ばかりを追っている。あるいは追わざるを得ない状況になっている。そのために行き詰まっているのではないか。概ねそんな主張だったと思う。個人的には反証可能性は科学の基準としてはとっくに時効だ、と前提的に語っている部分が印象深かった。うすうす感じてはいたけれど、あらためて現実を突きつけられた思いがした。2021/11/22

人生ゴルディアス

8
背筋が伸びる感じの翻訳だった。ポバーの「科学的言明とは反証可能性を持つことである」という意味において宇宙物理学の少なくない部分が科学ではない、と自虐で述べる物理学者の言を見たことがあるが、本書はそれを正面からとらえている。しかし数学がなぜ(たまに)有用なのか、そもそも論理的命題が意味を持つとはどういうことなのかと100年前に大問題になり、論理実証主義運動という汚い花火になった。また著者の苦悩は非常に強く理解できるが、絶望した問いへの答えは絶望でしか納得しないという神学だかの言葉を思い出すべきではとも感じた2021/11/27

鴨長石

4
科学は観測データに基づいて理論を形成していくという営みであるが、現在の理論物理学者は数学的な美しさを重視して理論を作ってからそれに合う観測データを見つけようとしている。具体的には超対称性理論だが、理論が要請する超対称性粒子は膨大な実験が行われたのにも関わらず未発見である。数学的な美しさは恣意的な概念であり、宇宙の真理とは関係がないのではないかというのが著者の意見である。序盤では科学哲学にやや敵対的であるかのような表現があったが、それは現在の物理学がうまくいっていないことの自虐の裏返しであったようだ。2023/06/23

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