内容説明
フランキーが十二歳の夏は、不思議な奇妙な季節だった。背ばかりひょろひょろ伸びてはいるが、友だちらしい友だちもいない孤独な少女フランキーは、兄が結婚することを聞いてある決心を固める。ひと夏の終わりに、多感な少女期の終わりを象徴的に重ね合わせて描いた、マッカラーズの代表作。待望の新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
174
十二歳の少女フランキーのひと夏の物語である。 兄の結婚で揺れる乙女の心情を 丹念に描く。 アメリカ南部の田舎町での少女の成長物語… 単純だが 味わい深い、そんな作品だった。2017/11/26
ケイ
94
嫌な感じの南部の夏のお話。少女が通る夏。禊をすませる夏。背ばっかりのびて外見と中身の均衡がおかしくなる年頃の夏、親友は引っ越し、兄は結婚することとなり、毎日キッチンで従弟のジョンと家政婦のベニソンと過ごす時間を持て余す夏。南部の暑い夏なのに、うすら寒い感じが行間に漂う。少女の持つフレッシュさや純真さが全く表に出てこない。めんどくさい女の子だなと思う。自意識が強すぎだな。訳者は南部の同時代の偉大な作家としてフォークナーを挙げているが、並列するのはどうかと思う。2016/04/16
スミス市松
23
十二歳の少女フランキーが求める「わかりたい」という願望――その切実さは「わかる」という言葉ではとうてい収まりきらない。この世界と、そして他者の心のありようすべてを開陳して自明のものとしなければ自分はこれ以上一日たりとも明日を迎えることができない、という強い孤絶感だ――がこんなにも読者の胸に突き刺さるのは、マッカラーズ自身がこの願望を思春期にすでに決着をつけた一事項として顧みているのではなく、〈今まさにここ〉で継続して在り続けている問題として意識しているからだ。2017/03/26
マリカ
21
アメリカ南部の田舎町に暮らす12才の少女の夏の物語。読んでいてなんとも痛ましい。「…こうして話してる間にも、その瞬間はもう過ぎているのよ。そして決してあと戻りしない。…地球上のどんな力も戻すことはできないんだわ。」のくだりが特に。この本を読んでいて、思春期の痛ましい自分を思い出さずにはいられなかった。あの頃はなぜかいつも心の中に焦りがあった気がする。結果的に、主人公の少女はフランキーからF・ジャスミンを経てフランシスへと成長する。彼女は、高校を卒業したら、きっとこの町を出てゆくのだろう。2012/03/23
501
18
新潮文庫から"結婚式のメンバー"というタイトルで新訳されている。12歳という年頃は自分の住む狭い世界に嫌気を感じ、自分の知らない世界に憧れを持つ。自分の思いと現実の齟齬が不可分にごちゃ混ぜになり、現実感のない思いばかりが先走る。そんな少女の元に兄の結婚式への招待が届き、少女の心をかき乱す。兄夫婦に連れられこの世界から抜け出したい。そう決心すると見慣れた世界が別のものに見えてくる。少女の心情の描き方がとても情緒豊かで美しい。2018/03/25
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- 和書
- 生きよ、そして記憶せよ