出版社内容情報
台湾は近代以降、清、日本、中華民国、アメリカという複数の帝国による連続的な支配を受け、またその複雑な民族構造のために統一的なナショナリズムや共通の歴史認識の形成を阻まれてきた。台湾の主体化を達成すべく、人々は歴史を紐解き、過去の国家暴力や不正義をただして内部的な分断を乗り越えることを通じて民主化を推し進め、生存空間を共にする者たちの同盟としての「台湾民族」と、多元・民主・平等に基づいて同盟を強化するためのイデオロギーとしての「台湾ナショナリズム」を志向した。しかしそうした内部的な努力にもかかわらず、国際社会においては、主権国家体制からの排除や、新興の中国を含む諸帝国の狭間にあるという地政学的構造に起因する現実政治の桎梏を自力で克服することはできず、その命運はいまなお強権によって掌握されている。
台湾の市民社会はそうした賤民(パーリア)的境遇を自覚的に引き受け、新たな帝国と資本主義による支配に対抗することを通じて逆説的に民主主義を深化させた。そしていまや普遍的価値を台湾社会に体現することに世界への回帰の道を見出し、行動している。
政治学者による20年におよぶ思想的格闘の集成。
内容説明
構造的に“賎民”であることを強いられてきた台湾。多元・民主・平等に基づくナショナリズムを梃子として孤立無援の境遇からの脱出を探る、持続的思索の集成。
目次
序 幸福な島にて
1 窮境を脱するために―歴史のヴェールをはがす
2 窮境に嵌まりこむ―帝国の狭間で
3‐1 再び、窮境を脱するために―ニーチェ的カント主義者の夢想
3‐2 再び、窮境を脱するために―社会的意志の創造
付録
著者等紹介
呉叡人[ゴエイジン]
1962年、台湾桃園生まれ。台湾大学政治系卒。シカゴ大学政治学博士。現職は中央研究院台湾史研究所副研究員
駒込武[コマゴメタケシ]
東京都駒込生まれ。東京大学教育学部卒。教育学博士(東京大学)。現職は京都大学大学院教育学研究科教授。専攻は植民地教育史、台湾近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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ばたやん@かみがた
BLACK無糖好き