マグヌス

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  • サイズ B6判/ページ数 221p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622072553
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

マグヌスは、ぬいぐるみのクマの名前。五歳で記憶喪失におちいった男の子は、このクマを肌身離さず持っていた。ドイツの敗戦、ナチスの父は逃亡、母も窮死。しかし、大人の都合で何度か名前を変えさせられた男の子の過去は、嘘とつくり話で塗り固められたものだった。そこから彼の長い旅がはじまる。舞台はドイツからイギリス、さらにメキシコ、アメリカへ。驚異的な記憶力をもち、数ヶ国語をあやつる彼だが、自分はいったい誰で、どこからきたのかもわからず、本当の名前を知らない。若い読者が本気で選んだ“高校生ゴンクール賞”(2005年)受賞作。

著者等紹介

ジェルマン,シルヴィー[ジェルマン,シルヴィー][Germain,Sylvie]
1954年生まれ。フランスの作家。エマニュエル・レヴィナスのもとソルボンヌで哲学を専攻し、哲学博士号を得る。文化省勤務のかたわら創作活動に入る。1985年に発表した処女作『夜の本』は書評家たちの絶賛をあつめ、グレヴィス賞をはじめ六つの文学賞を受賞。1986年から1993年にかけてプラハに住む。作品に『怒りの日々』(1989、フェミナ賞)など。『マグヌス』で2005年度の「高校生ゴンクール賞」受賞

辻由美[ツジユミ]
翻訳家・作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

154
本書は2005年度の「高校生ゴンクール賞」*受賞作。ひたすらに喪失をテーマにした物語だ。5歳以前の記憶を遮断されていた主人公(さて、彼を何と呼ぶべきだろうか)は、その後も数々の喪失を経験してゆく。そもそも根源的に自分がどこの誰なのかが分からないのだ。「マグヌス」と書かれた熊のぬいぐるみがだけが唯一の手掛かりだ。物語は、主人公の遍歴を語るとともに、第2次世界大戦におけるナチスの旧悪を、そして同様に連合軍によるハンブルグへの徹底爆撃(ゴモラ作戦)の悲惨をも描き出してゆく。エンディングは、予想を覆すものだった。2014/10/07

こぽぞう☆

22
ナチスーおそらく強制収容所の高官である父とその浅はかな妻である母に育てられているところから話は始まる。子供には5歳以前の記憶がない。言葉さえ失っている。まず第一の喪失。その後も過去を無くしたり、愛する人を亡くしたり。連続する喪失の物語。人は何があれば生きていけるのか?何もなくても?それともそれは生きているとは言えないのか?2016/07/13

ボウフラ

5
ナチス党の両親から育てられ終戦をして逃亡を余儀なくされ名前も転々と変えていくうちにぬいぐるみのクマの名前のマグヌスを自分の名前にして魂の彷徨が始まっていく。物語の「断片」の章と詩の引用などが挟まれる形で話が進んでいく。滔々と語られる美しい文章だった。83点2025/04/01

fig

5
自分は誰か。何者か。誰しも考えるに違いないそれは、ごく普通の家庭に生きるならば、まず所属する社会的カテゴリーを頼りにするものだろう。しかし、彼はそれを失う。何度も。何度も。そのときどきの在り様で、対峙し、溶解し、逃げ、呑み込み、沈めようとする。端的な語りは、激烈。アイデンティティの確立と呼ぶにはあまりに凄まじい、人と社会の流れにゼロを与えられた1人の半生。読んで良かったと思える一冊。2010/03/13

秋良

3
各章を断片と表現するところが主人公の人生そのものを表しているよう。自己も世界も、何度も作っては壊されを繰り返し、翻弄されていく。合間に挟まれる幻視や唄、注釈が小粋。2013/09/20

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