大人の本棚
病むことについて

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  • サイズ B6判/ページ数 250p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622048350
  • NDC分類 934
  • Cコード C1397

出版社内容情報

病気になったとき、私たちはどんな本を読むのだろうか? かたい本か、あるいは軽い本か? ウルフ女史はいったいどんな本を選ぶのだろうか? 誰であれ、病気にはなるのだから、これはとても重要な問題である。タイトル・エッセイはこの問題に、やや脱線気味ながら、一つの答えを与えてくれる。

彼女はかつて、小説を書くのはしんどい作業であるが、評論やエッセイを書くのはとても楽しい、と言ったことがある。

「ウルフのエッセイの魅力はと言えば、卓抜な着想、思いがけない切り口、気の向くままにペンを走らせているようなルースな構造、計算された脱線、適切な比喩、そして皮肉な口調でふと洩らされる本音など、多々挙げることができよう」(編訳者)。

幼いときから自由にどんな本でも読ませてくれた、気むずかしい父親・レズリー・スティーヴンの思い出。伝記ははたして芸術たりうるか――これは友人のリットン・ストレイチーの伝記文学を軽妙に論じた一篇である。他にも、書評や『源氏物語』について、フォースターや30年代の世代に関してなど、14篇のエッセイを収録。さらに、皮肉とユーモアに満ちた短篇を2作収める。

シリーズ《大人の本棚》



Virginia Woolf (ヴァージニア・ウルフ)
1882年、著名な文芸批評家レズリー・スティーヴンを父親として、ロンドンに生まれる。父親の教育と知的な環境(ブルームズベリ・グループ)の中で、早くから文芸への情熱をはぐくむ。1915年、最初の長編小説『船出』を出版し、ついで『夜と昼』『ジェイコブの部屋』を発表する。さらに、彼女の小説世界を十全に開花させた傑作『ダロウェイ夫人』『燈台へ』『波』が生まれる。ここで彼女は、プルースト、ジョイスらによって示された「意識の流れ」を、独自の立場から追求している。『幕間』をのこして、1941年神経衰弱のため自殺。また、重要なものとして他に、『自分だけの部屋』『女性にとっての職業』『三ギニー』などの数多くのエッセイ、内面の記録である「日記」がある。

川本静子(かわもと・しずこ)編訳
1956年津田塾大学英文科卒業。1958年東京大学大学院修士課程修了。1962-63年ハーヴァード大学大学院留学。現在 津田塾大学教授。著書『イギリス教養小説の系譜』(研究社、1973)、『G. エリオット』(冬樹社、1980)、『ジェイン・オースティンと娘たち』(研究社、1983)、『ヒロインの時代』『遥かなる道のり――イギリスの女たち1830~19l0』(共編著、国書刊行会、1989)、『ガヴァネス』(中公新書、1994)、『〈新しい女たち〉の世紀末』(みすず書房、1999)。訳書 V. ウルフ『波』(みすず書房、1976、1999)、『自分だけの部屋』(みすず書房、1988)、『壁のしみ――短篇集』(みすず書房、1999)、『オーランドー――ある伝記』(みすず書房、2000)、トマス・ハーディ『日陰者ジュード』(国書刊行会、1988)、E. ショウォールター『女性自身の文学』(共訳、1993)、E. M. フォースター『ロンゲスト・ジャー二ー』(1994)、『民主主義に万歳二唱』(共訳、1994)、『アビンジャー・ハーヴェスト』(共訳、1995)、『ある家族の伝記』(共訳、1998、以上みすず書房)。

内容説明

書評は役に立つのか?病気のときにはどんな本がいいか?伝記は芸術たりうるか?父の思い出から『源氏物語』へ、皮肉とユーモアに充ちたエッセイと短篇。

目次

伝記という芸術
わが父レズリー・スティーヴン
いかに読書すべきか?
書評について
『源氏物語』を読んで
病むことについて
なぜですか?
女性にとっての職業
E.M.フォースターの小説
『オローラ・リー』
エレン・テリー
斜塔
空襲下で平和に思いを寄せる
蛾の死
遺贈品
雑種犬ジプシー

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かんやん

32
エッセイ集とおまけの短編二つ。父の回想、源氏物語やE・M・フォースター、ブラウニングの妻、そして読書そのものなど、テーマごとに、こんなにも豊かに想いを綴ることのできる人は、どんな暮らしを営んできたのだろうか。読み、比較し、思索することが人を豊かにすると、素直に結論して良いのだろうか。ただ死んでゆく蛾の観察をあれほど詩情豊かに描写する感性は、『斜塔』で扱われた階級によって育まれたものでもなく、文人である父に由来するのでもなく、グループの仲間と刺激し合うことによって養われたものでもないのだろう。別格。2021/05/30

miyu

31
彼女をフェミニストと評する人は多く実際にそうなのかもしれないが、今まで私は全然そんなこと感じたことがない。どちらかと言うと口煩くて皮肉屋な女性だし、自分に対しても厳しいせいであんなふうに亡くなったんだろうなと思う。わけの解らない(と専ら評される)小説の数々と比べると、ウルフの評論やエッセイは意外に正統派ですごく硬い。いや堅いか。ウルフのことだから『病むこと』とはもちろん精神的な病についてだろうと読み進めたが先入観はよくないと気づかされた。評論と創作、未発表原稿が並び何れも一筋縄ではいかぬ読み応えがあった。2020/02/15

ネギっ子gen

29
エッセイ14編と短編2編を収録。表題にもなった「病むことについて」を読みたくて本著を読みだしたのだが、そのエッセイ以外どれも滋味深くて。特に「書評について」については、著者自身が書評家としての長い経験があるだけあって、誠に興味深い読み物になっている。というより、わたし自身、ガタ-的レビューに終始してるのじゃないか、との反問があり、煩悶したが……。著者の名は神谷恵美子氏によって、強く意識させられながら、長年ビミョウな距離感が……。これを契機に、しっかり読み込みたい。次は、『ある作家の日記』になるかなぁ……⇒2020/12/28

有理数

14
ヴァージニア・ウルフのエッセイ集。彼女の作品はまだ読んだことがありませんが、なかなか面白いです。例えば当時の英国では『源氏物語』は読み物ではなく、天皇の前で紫式部が音読していたものだと思われているなどの記述は興味深い。他にも「書評について」など、書評や批評眼などについての関心が高い方だったことがよくわかります。しかし労働に関しての文章なども随分文学的な言い回しをなさっていて、作家気質の方だなと。彼女の作品をこれからいくつか読もうと思いますが楽しみです。2015/02/25

きゅー

11
ヴァージニア・ウルフのエッセイ十四篇と掌編二篇を収めた作品集。ここで取り上げられたエッセイでは全体的に「~すべきだ」という主張が強く感じられ、落ち着いて読めなかった。たとえば「書評について」でも、拙速な仕事をしている書評家に対する非難の舌鋒が鋭い。知的で高い教育を受け、終生金銭的には困ることの無かった女性がフェミニズム運動や、労働者階級についてエッセイを書く。どうも理論面ばかりが強調されているように感じてしまった。2012/05/08

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