内容説明
生まれた家族がよかっただの悪かっただの、いったい何を言ってるのか。住まいや国のあり方を問い続ける、『独立国家のつくりかた』の俊英が辿り着いた、“家の族”であることの意味。生き延びるための家族小説。
著者等紹介
坂口恭平[サカグチキョウヘイ]
1978年、熊本県生まれ。建築家、作家、芸術家、音楽家。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。『ゼロから始める都市型狩猟採取生活』などで0円で生活する術をしめす。2014年、小説『幼年時代』で第35回熊日出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
安南
51
双極性障害を患っている坂口氏の壮絶な鬱期を描いた私小説(だと思う)動じず全てを受け止め肯定してくれる妻フーは理想的な伴侶に思えたが…だんだんその愚鈍とも言える寛容さに空恐ろしくなる。イメージしたのは妖怪ヌリカベ。共依存と簡単に片付けられない2人の関係は興味深い。〔「おれが調子が悪ければ悪いほど、フーはより幸福になっていくってこと?」「恐ろしいことだけど、そうかも…」フーの幸福の主成分は、私の絶望だった〕同じ鬱を扱った作品でも尾道の襖絵のような感動はなかった。夫婦愛のファンタジーとして読むべきなのか。2015/09/29
ネギっ子gen
32
冒頭から「目をさますと、私は死にたくなっていた」と。生き延びるための家族小説。【共感】①希死念慮に襲われた時。<急激な運動をしている間は、考えないですむが、通りすがりの人すらも悪意を持ってこちらを見ている気がするため、外出はできない>。そうなんですよねぇ……。<こんなとき音楽を奏でようとは思えないし、静かに自己否定の呪文のほうが先回りしてしまい、文字を追いかけることができない。体はどんどん破滅的な衝動につき動かされていく>。そう……終始、自己否定の呪縛に苦しめられ続け、破滅という名の闇に誘われていく……⇒2020/03/21
rors(セナ)
15
坂口恭平さんの個展が熊本で開催されていて、行きたいなぁと思いなが読む。これは鬱の症状の時に書いた文章なのだろうか…幻想のようなものが入り、まるで他人を描くように自分を描く。「これは孤独だろう、辛いなぁ」と思いながら読む。けれど、彼にはフーさんがいる。人はみんなフーさんみたいな人がそばにいたら、寂しくないよな…と思った。2023/02/20
*
12
絶望の淵にいて、誰とも話したくなく、しばらく放っておいてほしい時がある。そんな状況では、他人以上に、まずは自分で自分を遠ざけるべきなのかもしれない。整備中の脳を不用意に動かさない。そしてアップデート完了を静かに待つ▼作者について知らなくても、躁鬱のリアルな描写には引き込まれる。ただ、なんやかんやでアウトプットの量も質も高いし、誰かを救っているから良いじゃんと思ってしまう。希望になりうる一冊だけど、自分と他人を比べがちな時は慎重に読みたい。2019/10/17
ミズグ
12
スラスラ読めるが、しっかり読みごたえがある。私も家族のことを書き留めたいと思った。それは何の意味を持つわけでなく、ただ書き留めたいと思った。それでも良いと思わせてくれた。2015/11/01
-
- 電子書籍
- オーバーロード8 二人の指導者