内容説明
「家出ようと思うんだけど、一緒に来る?」身勝手な親から逃れ、姉妹で生きることに決めた理佐と律。ネネのいる水車小屋で番人として働き始める青年・聡。水車小屋に現れた中学生・研司…人々が織りなす希望と再生の物語。
著者等紹介
津村記久子[ツムラキクコ]
1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。08年『ミュージック・プレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、19年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞、20年「給水塔と亀(The Water Tower and the Turtle)」(ポリー・バー卜ン訳)でPEN/ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
321
津村 記久子、2作目です。貧窮姉妹と鸚鵡の40年間に渡るクロニクル、群像劇、読み応えがありましたが、新聞小説のせいか、少し冗長な感じがしました。 https://mainichi.jp/%E6%B0%B4%E8%BB%8A%E5%B0%8F%E5%B1%8B%E3%81%AE%E3%83%8D%E3%83%8D/2023/04/08
のぶ
252
ほのぼのとした物語だった。主人公は理佐と律の姉妹。始まりは1981年。姉の理佐は短大への進学が決まっていたが、母親が入学金を交際中の男に渡してしまったために、諦めることになった。妹の律が男から冷たい仕打ちを受けていることもわかり、住み込みの仕事を探して二人で家を出る決意をする。山間の小さな町にあるそば屋の仕事を見つけるのだが、「鳥の世話じゃっかん」という謎の付記がある。この鳥というのが、ネネである。それから40年にわたる話だが、大きな出来事は特に起こらないのになぜか人との触れ合いが心を打つ作品だった。2023/03/21
修一郎
224
津村さんの作品にはいつも心優しい人が登場するけども今回は格別。周辺の人のちょっとした良心や親切を積みかさねて人生ができあがっていくというお話し。もちろん理佐・律もえらいんだけども律の成長を見守る周りの人すべてが自然でさりげなく無理なく人に優しくできる素敵な人たちだ。律とネネが一緒に過ごした40年,浪子さんも藤沢先生も守さんも,こんな風に人に親切にして生きなきゃ人生は退屈なんですよ。水車小屋とヨウムが題材でこんな温かい物語になんなんて。素晴らしいお話しでした。2023/05/20
とろとろ
207
高校を卒業したばかりの18歳の主人公は8歳の妹が母の恋人に虐待されていることを知り、2人で家を出て山あいの町にたどり着いて暮らし始める。決して裕福とは言えなかったが、町の人はみな過度に優しすぎず出来る範囲の親切で二人を扱ってくれている。そういう人達に見守られてきた事から、自分たちの人生も少しずつ修正してよい方向に持っていくことが出来るようになり、また新しくやってきた人達には出来る範囲の親切をしてあげる。「自分はおそらく、これまでに出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている」。究極の性善説な話でした。2023/06/05
TATA
192
津村さんは7冊目、多分これがベスト。津村さんの作品といえば、やたらとマニアックな登場人物の好み、それなのに舞台設定は妙に普遍的で、そのギャップにいちいち笑ってしまうのですが、これはほぼ人間の不思議な鳥であるネネと周りの人たちのとても素敵なお話。そもそもネネが一番不思議な舞台設定なのだけど、だからこそ他の人達の素朴さ優しさが際立つ。ホント、素敵なストーリーでした。だって、六波羅探題とか貧窮問答歌を話す鳥なんていないよね?2023/06/08