内容説明
時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す…。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年に『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、10年、11年に『ナニカアル』で島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。15年に紫綬褒章を受章。21年に早稲田大学坪内逍遙大賞、23年には毎日芸術賞を受賞。『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』『燕は戻ってこない』など著書多数。日本ペンクラブ会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
640
いやぁぁぁぁ。今まで桐野さんベストは『OUT』だと思ってたけど、これはそれに肉薄する内容。個人的な思い入れを差し引いても。溜めに溜めて読んだ甲斐があったというものだ。人生流れに棹さすことも大事だね。終わったからこそ言えることか。2024/07/16
W-G
562
バブル期を舞台にしていても、あくまで主題は個々の女性のパーソナルな部分にあり、上巻からずっと感じていた軽さは、そこが肝ではなかったからだと、読み終わって納得。それにしても展開があっさりしすぎている感があって、特にラスト100頁くらいは、かなり駆け足に思えた。とはいえ、終わりよければすべてよしの言葉通り、物悲しさを残しつつ、タイトルに結実していく上手い締め括り方のおかげで、よい読書タイムだったと満足。こういう目線で描かれるバブル時代もアリだなと最後には肯定的な気持ちで本を閉じることが出来た。2023/05/10
starbro
498
上下巻、650頁弱完読しました。破綻すると解っていても、スリリングな展開、バブル崩壊、宴の跡、哀しく悲惨な結末でした。タイトルがこんな意味だと思いませんでした。私はバブル末期に社会人になったので、あまり恩恵もなく、今現在も真っ当な人生をおくっていますが、バブル全盛期だったら、本書の主人公達のように破綻していたかもしれません(怖) https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-604.html2023/03/06
青乃108号
451
上巻の狂騒と疾走感は下巻に入り一転、地獄絵図を見ているような展開に。正直、上巻を読んでいる時は俺自身も同時代を生きていたため、作品世界に比して当時の、そして今の自分って何てしょうもない、ちんけな生き方をして来たんだろうと大層惨めな気分にもなっていたのだが、この下巻。ここまでとことん突き落とすのか。唯一真面目に堅実に生きてきた水矢子までも。恐ろしい時代だったんだな。大して何にも楽しい事はなかった俺の半生も今生きて何とかやれてるんだからそれはそれで良かったんだろう。皆、大変よね。多分これからも。頑張ろうね。2024/04/09
修一朗
341
バブルに乗って贅沢を享受していた人たちも転落が始まったらあっという間だ。じゃぁ地道に生きていたらよかったかというとそういう結末でもない。一部の逃げられた人以外は眺めていただけの人だってヒドイ目にあった。このあと強烈な就職氷河期になったので水矢子のようなひどい目にあった人も多かったのだ。投資ジャーナル事件をモデルにしているしNTTについてもほぼ事実を踏襲しているし,桐野夏生さんも当時お金を回してバブルで儲けている人を傍目で見ていいなぁと思っていた方だそう。桐野さんは改めてあの時代に対して怒りを表明したのだ。2024/05/06
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