出版社内容情報
再生医療は我らの救世主か? それとも生命の神秘を穢す悪魔か?
現代社会の光と影に斬り込む真山仁が問う、初の医療小説!
内容説明
脳細胞を蘇らせる人工万能幹細胞「フェニックス7」それは人間の尊厳を守るために生み出されたはずだった。国家戦略の柱としたい日本政府は一刻も早い実用化を迫る。再生細胞による医療が普及すれば、人は永遠の命を手に入れるかも知れない―。しかし、本当に細胞は安全なのだろうか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
191
真山 仁は、新作中心に読んでいる作家です。認知症医療ベンチャー・ミステリ、上巻一気読みです。マッド・サイエンテストの暗躍なのでしょうか? 続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。 https://books.bunshun.jp/articles/-/53382020/05/23
utinopoti27
165
山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞してから、わが国でも一躍脚光を浴びるようになった再生医療の世界。本作は、アルツハイマー病の治療に画期的な効果をもたらすかもしれない、奇跡の人口万能幹細胞「フェニックス7」を巡り、神の領域に踏み込もうとする者たちの「狂気」を描く作品だ。安全性に疑義があるため、未だに治験が進められないことに焦る研究機関の篠塚が、ついに手を染めた禁断の所業とは何か。最近著しく増加している認知症老人の行き倒れに疑念を抱く宮城県警の楠は、ある老人の遺体に着目するが・・。衝撃の下巻へGO!2021/10/27
クリママ
52
アルツハイマーを治療する再生医療。研究者、莫大な資金を提供するIT企業家、再生医療を国家戦略にしたい政府と政府系医療ベンチャー支援機構、治験を阻む古い体質の慎重派が絡み合うところに、高齢者の失踪、死亡事件が起こり、警察が動き出す。人工万能幹細胞で脳細胞を再生する医療には目覚ましい効果があるものの、重大な副反応が隠されている。なんとなく先が見えるような気がするものの、下巻が期待される。2022/11/18
まつうら
50
平均寿命が長くなり、認知症とどう向き合うかがクローズアップされる昨今。しかし、対応方法のひとつとして期待される再生医療には、神の領域を侵すのかという声もある。そんな中、この作品で開発されたフェニックス7は、脳細胞を再生するという画期的な治療法だ。研究途上のフェニックス7を投与された数学者の諸積が、往年の若さを取り戻しすごい閃きで数式を操る姿に、なんとなく「アルジャーノンに花束を」を思い出す。もしかして、この治療法の先に待っているのは破滅なのかもしれない? そんな予感に、ページをめくる手が早くなる。2023/01/22
Yunemo
43
一番気になるこの分野、いよいよ脳への再生医療。永遠の命を人間の尊厳を、どこに求めていくのかな、との想いで。とは言え、本作、最先端技術分野と靴底をすり減らしながらまい進する警察署員との接点を、じわりとした感覚でのサスペンスとして表現しようとしているのでしょうか。その乖離部分に焦点を当てて読みどくと、これはなかなか、との期待感で。以前の自分が無くなるという認知症への恐怖感、徘徊という行動、この行動を逆手にとっての治験者獲得。上巻で提起されてる事情(目前の認知症、死)が、下巻でどう展開されていくのか、期待感増。2020/04/19