内容説明
心のよさは、ほかのひとの心もうごかす「花のき村と盗人たち」をはじめ、命をかけてはがきをとどける少年のすがたを描く「一枚のはがき」など、人間の心のうつくしさとみにくさを描いた四編を収録。
著者等紹介
新美南吉[ニイミナンキチ]
1913年、愛知県に生まれる。本名・新美正八。半田中学のころより文学に興味をもち、文芸誌「オリオン」をだす。童話雑誌「赤い鳥」(1932年1月号)に「ごんぎつね」が掲載され、この年、東京外国語学校英文科に入学。1936年、卒業して貿易会社に勤めたが、喀血のため帰郷。代用教員を経て安城高等女学校教諭となる。1942年、腎臓悪化の中で数々の代表作を一気に完成。1943年、死去
ささめやゆき[ササメヤユキ]
東京都に生まれる。出版社に勤務後、ヨーロッパ・アメリカで遊学、フランス・シェルブール美術学校在籍。ベルギー・ドメルホフ国際版画コンクールで銀賞受賞。『ガドルフの百合』(小学館絵画賞/偕成社)、『真幸くあらば』(講談社出版文化賞さし絵賞/講談社)、『あしたうちにねこがくるの』(日本絵本賞/講談社)。絵本、さし絵、装丁デザインなどで活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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めしいらず
43
「花のき村と盗人たち」どんなに強がっていても、孤独に生きてきた人生は淋しいもの。人から蔑まれ、目を逸らされ続けた盗人の頭が、選んで背負ってきたそれまでの人生を、屈託のない真っ直ぐな優しさに触れることで悔い、ついに訪れる安息。人間愛に満たされるよう。「屁」頭脳の優劣や貧富でもって人を色分けしたり、見下げたりすることの卑しさ。主人公のやわな正義感は、自分が恥をかく怖さを前にすると、いとも容易く折れ果てる。そのことの悔しさすら誰かに押し付け無かったことに。自分の内にも確実に潜む、できれば見ないでいたい側面。2014/01/13
杏子
16
童話選集5冊を読破。有名な話から知られていない話まで、どれも面白く、深い洞察と人間味にあふれた作品集だった。子どもたちにも勧めたい。そして出来れば来年度、小学校蔵書に加えたい。全部の漢字にふりがながふられているし、字体も大きくて読みやすい。適度に挟まれた挿し絵は各巻それぞれで違った味わいがあった。3、4、5巻におさめられた久助くんの話が、田舎の学校の子どもたちの様子を知れてよかった。いろいろ鋭すぎて、笑ってしまった。面白い!2019/10/07
あんみつ
8
《ネタバレ》子供の日常は平穏無事というわけではない。それどころか毎日何かしらひっかかりを感じたり悩んだりして揺れ動いている。『屁』は可笑しい話だとばかり思っていただけに何とも苦い後味だった。『うそ』とは逆を行く結末に至っており、人間のエゴが浮き彫りになる。「人が生きていくためには肯定される」…?いや、そんなことはない、と言いたいけど、さて現実はどうだろうか。明るい気持ちになりたくて読んだ『一枚のはがき』に突き放された。なんて悲しい…。なんで?なんで?と私も問わずにはいられなかった。 2014/01/25
おはなし会 芽ぶっく
7
『一枚のはがき』を読んでみたくて借りに行ったら、全巻かりてしまいました。『 花のき村と盗人たち / うそ / 屁 / 一枚のはがき 』の4編。『花のき村と盗人たち』以外未読で嬉しい出会いでした。表紙絵はささめやゆきさん。2020/08/04
ruri
2
新美南吉さんて終戦2年前に30歳でなくなったんだ。若い。いつも汚れた心をきれいにしてくれる。 美しい心になりたいね。澄んだ目でさ。2016/02/19