内容説明
「フランス反省哲学」の思想潮流を継承し、リクールに多大な影響をもたらした20世紀の知られざる哲学者ナベール。その主著である本書(1955年刊行)は、きわめて晦渋で屈折した文体ゆえ読者を限定する一方で、思想の歴史のなかでも唯一無二の緊張と潜勢力をはらんだ独自の「悪」論をなしている。訳者による「ナベール入門」ともいうべき、充実の解説および注を付す。
目次
第1章 正当化できないもの(正当化できないという感情;災悪―規範にもとづく判断とその限界 ほか)
第2章 不純な原因性(知的意識の自発性と意志作用の理性性;意志の原因性の根源的不純性 ほか)
第3章 罪(悪の問いへの思弁的解答の断念、悪の試練=経験へと立ち戻ること;罪の感情と自己への不相等の感情との関係 ほか)
第4章 意識間の分離(意識間の分離という視点への移行;意識間の相互性の関係と対自的な個別意識との同時生成 ほか)
第5章 正当化(義認)へのアプローチ(正当化(義認)の欲望の自覚。その端緒となるもの
カントの再生概念とその不十分性。正当化(義認)の問いの核心にあるもの ほか)
著者等紹介
ナベール,ジャン[ナベール,ジャン] [Nabert,Jean]
1881年にフランスのイゾーで生まれる。1910年に哲学のアグレガシオンを取得し、地方の高校の哲学級で教え始める。1924年に博士論文『自由の内的経験』を刊行。1931年から1941年までアンリ四世高校の高等師範学校の準備級で教える。1943年に『倫理のための要綱』を刊行。1944年に哲学の視学総監となり、その後ヴィクトール・クーザン文庫の長を務めた。1960年に死去
杉村靖彦[スギムラヤスヒコ]
1965年生。京都大学大学院文学研究科准教授。現代フランス哲学・宗教哲学。著書に『ポール・リクールの思想―意味の探索』(創文社。日本宗教学会賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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