内容説明
女性皇族が結婚後も皇族の身分にとどまる「女性宮家」についての議論が本格化している。将来的には女系天皇の誕生にもつながるとして、女性宮家の創設に慎重な声もある。しかし、そもそも現在の皇室典範にある天皇は「男系の男子」に限るという原則が本来の皇室のあり方なのか?これまでの歴史から、男系だけでなく女性の血統も皇位継承の正統性を担保してきた事実を明らかにする。
目次
第1章 危機に立つ皇室(「女性宮家」の浮上;皇室は将来、悠仁殿下だけに ほか)
第2章 日本神話の中の女性(「神話」とは何か;「より文学的」な『古事記』 ほか)
第3章 女性君主のいる国・いない国(文明の4類型;シナ史上唯一の「女帝」 ほか)
第4章 女帝史の光と影(「女帝」前史;ヒミコと男弟 ほか)
第5章 女性宮家は伝統の再発見(危機の背景;側室不在という「構造的要因」 ほか)
著者等紹介
高森明勅[タカモリアキノリ]
1957年岡山県生まれ。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。同大学日本文化研究所研究員。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「国家観・歴史観」講座担当などを歴任。専攻は神道学・日本古代史。小泉純一郎内閣当時、「皇室典範に関する有識者会議」において8名の識者、専門家の一人としてヒアリングに応じる。現在、日本文化総合研究所代表。國學院大學、麗澤大学の講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Y2K☮
47
主張は小林よしのり「新・天皇論」に連なる女系&女性天皇公認と女性宮家創設。文体が穏やかで悠然としていて、小林氏には無い気品を感じた(笑)これを読めば「天皇は男系男子に限る。それが日本の守るべき伝統」などと叫ぶ輩の不勉強がわかる。神話なんて史実じゃないと侮るなかれ。国の根本の価値観を物語る神話にこそ真に守るべきエートスが潜む。皇祖神は女性神の天照大神で、描かれる男女の神々はどこまでも対等。一見伝統面した男尊女卑はシナから輸入された風習に過ぎず、男女平等こそ中華思想から離れた日本が守り通した固有の伝統なのだ。2016/09/28
mitei
38
女性天皇は決して中継ぎではなく、重要な役割を演じてきたことが伺えるという主張に納得。2012/05/18
こぽぞう☆
20
図書館本。これだけ「女性天皇」について延々と書きながら、最後の皇室典範への提言で男女差別してるのは笑える。ただ、大日本帝国憲法が生まれるまで生きてた律令では女性天皇の子供に皇位継承をみとめると明文化されていたことは驚きだ。「男系」にこだわるのは、少なくとも法律上最近だけなんだ!って。2019/08/05
とこ
5
とてもおもしろかったです。女性宮家創設に動いていたってことすら知りませんでした。本書は自分の論を押し通すすことなく、ほかの人の論を提示したり、消去法で論じていたりと、とても納得できる本でした。また、「女帝は中継ぎではなかった」という主張はいろんなとこで見かけたが、本書は女帝を一人ずつ提示して、中継ぎかそうでないかを論じていたのがよかった。反対派の方の本も読んでみたいと思います。2012/11/11
レコルト
2
女性天皇が存在したことがわかっただけでも、価値のある一冊です。学生時代に日本史の授業で天皇の名前を覚えますが、性別に言及がなかった(あったけど忘れた?)だけに、勉強になりました。もちろん、男系天皇にこだわる意見の本も読もうと思います2017/08/07