内容説明
『誰でもいいから殺したい』は、人を物のように道具として扱うおそろしい言葉です。無差別殺傷事件は、とてつもない凶悪な犯罪です。しかし同時に、彼らは誰でもいいから愛して欲しかったのではないでしょうか。人を殺し、自分の人生も終わりにしようとした彼らは、本当は誰かに必要とされたかったのではないでしょうか。彼らをただ悪人として責め立て、悪い人が悪いことをしたと考えるだけでは、私たちは事件から、なにも学べません。本書は、狭い意味の犯罪心理学の問題だけではなく、親子関係、思春期、青年期の心理、そして現代社会が抱える、さまざまな問題について、考えていくための本です。
目次
第1章 秋葉原無差別殺傷事件
第2章 「誰でもよかった」の心理
第3章 「ネット社会」が心を追い詰める
第4章 大量殺人の心理
第5章 「人との関係」がうまくつくれない
第6章 犯罪者をつくらないために
著者等紹介
碓井真史[ウスイマフミ]
1959年、東京下町の生まれ。日本大学大学院博士後期課程修了、博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。文部科学省スクールカウンセラー。年間50回以上の講演、地元のテレビ、ラジオのコメンテーターほか、全国版のニュース、新聞、雑誌などでコメント掲載(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アリス
11
「誰でもいいから殺したかったんだ」誰かにとっての大切な人を、そんな軽々しい理由で奪うだなんて。彼らは一体どういう教育を受けてきたんだと、報道を見るたび憤慨していた。この本を読むまでは。無差別に人を殺した彼らは、その多くが親からの愛情を充分に受けられなかったために、何歳になっても親の愛を求めてやまない青年たちだった。理由を教えてもらえずに厳しいしつけや体罰だけを受け、男女交際を一切認められなかったりと自由を奪われ、会話はなく、甘えようとしても甘えられない。そんな生活が幼少期からずっと続いていた。→2014/03/06
Humbaba
3
人を殺すことはそもそも間違っている.しかし,仮に殺すとしても,そのときには強い感情があってしかるべきである.しかし,そんな強い気持ちなく誰でもいいから殺したい,と思う人もいる.社会とのつながりを上手く作れないと,そのような心を抱いてしまうことも起こり得る.2011/01/19
しげ
2
社会不適合を起こしている青少年について「思うように行動しているが、願うようには行動していない」という言葉が紹介されており、その視点にハッとしました。思うがままの行動の奥にひそんでいる、彼ら彼女らの本当の「願い」はなんなのか。本人すら気づいていないかもしれない、その「願い」の息づかいに耳を澄ますことの意義を感じました。2023/12/15
きっきまま
2
無差別殺人など全く関係がない人を傷つけるにいたるまでの心理をわかりやすく解説2016/01/16
ず〜みん
2
前半の秋葉原無差別殺傷事件や土浦無差別殺傷事件の実例を挙げながらの章は面白いが、後半の五章から『犯罪者を作らないために』は、間延びしているというか、カウンセラーとしての功績を述べているだけの様な印象を受けたのが残念だった。2011/12/04