内容説明
稀にみる天才性で、日本美術史にその名を残す近世の画家。一般に琳派の祖と称されるが、実はその位置づけは、後年“奉られた”ものにすぎない。近代日本美術研究の立場から、残された作品群を分析、琳派成立の歴史的経緯を踏まえつつ、まったく新しい宗達像を浮かびあがらせる快著。
目次
第1章 宗達が「琳派」と呼ばれるまで
第2章 風神雷神図屏風
第3章 宗達芸術その1―装飾性と平面性
第4章 宗達芸術その2―たっぷりした水墨
第5章 宗達芸術その3―動きだす絵画
第6章 新たな宗達像―制作年代推定から
第7章 ポスト宗達派 光琳・抱一・其一
第8章 近代絵画と宗達
第8章 宗達vs.マチス
著者等紹介
古田亮[フルタリョウ]
1964年東京生まれ。93年東京国立博物館研究員。98年東京国立近代美術館(01年より主任研究官)を経て、2006年に東京藝術大学大学美術館助教授に就任、現在准教授。専門は近代日本美術史。04年「琳派RIMPA」展、06年「揺らぐ近代」展、07年「横山大観」展など多くの企画展を担当する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
11
出張の新幹線の復路で読む。帰りに、三菱一号館美術館と出光美術館に行つたので、美術畑の人の学説整理や切り口を知るにもタイムリーで面白かつた。宗達作品の分析、展覧会と「琳派」イメージの形成、ブランド戦略と法橋叙任など、示唆に富む。2018/02/16
ムカルナス
6
琳派が「風神雷神図屏風」に象徴されるように宗達→光琳→抱一と継承されたというストーリーになったのは昭和47年以降のことだという。琳派400年の昨年はこのストーリーで琳派作品を見て回ったが「風神・・」の3作品の同時展示では違いは素人目にも明白だった。宗達は画家であり光琳はデザイナー、抱一は模写。この差異を本書は解き明かしてくれる。光琳は宗達という偉大な画家の装飾・デザイン部分だけを取り入れ、そのデザイン性が後世に継承されていったのだと。後世の人間が作り上げた琳派ストーリーから心地よく開放してくれる本だった。2016/02/02
amabiko
3
京博の琳派展、入館待ち時間のお供にと考え、書庫山から発掘。帯の「宗達は琳派ではない!」には納得。ナルホド、風神雷神図の三対を実見すると、宗達だけが別であることがよくわかる。そうなると、琳派という括りではなく、近代絵画をふくめた宗達派展が是非とも観たくなる。第9章の音楽の話は正直よく理解できなかった部分もあった。が、今回間近で見た醍醐寺「舞楽図屏風」の持つ力には圧倒されたことは確か。著者が本作を最晩年の作に位置付けたのも頷ける。次に宗達の大きな展覧会がある時まで、この本は再び山に戻しておこう。2015/11/04
スエ
3
「宗達vsマチス」という観点は非常に興味深い。ぜひ展覧会を実現してほしい……! 光琳の「紅白梅図屏風」の金箔手描き説に疑問を投げかけているのも慧眼ですね(後の調査で同説は否定されているので)。2015/04/05
へへろ~本舗
3
先日、トーハクで「風神雷神図屏風」を観てきたこともあり、2000冊目は本書にした。琳派の祖と言われる俵屋宗達。彼の作品分析、光琳・酒井抱一らとの比較、そしてマチスとの比較で書かれた美術論。難しいことは良くわからないが、実物を観たいという気になった。2014/04/19