内容説明
味覚から「美覚」の世紀末へ。世紀末の産業都市グラスゴーで産声をあげた「ティールーム」。C.R.マッキントッシュをはじめとするデザイナーの活躍により、この空間は、さまざまな芸術・文化の発信基地となる。そしてその陰に、新しい美意識を体現した、ひとりの女性の存在があった。
目次
第1章 スラムとオアシス
第2章 ティールーム誕生
第3章 「テイスト」のモダニズム
第4章 ミス・クランストンの登場
第5章 アーティストを育てたティータイム
第6章 デザイン史の舞台裏
第7章 ティールームの聖地「柳の喫茶店」
第8章 黄昏のティールーム
第9章 ミス・クランストンの遺産
第10章 紅茶は家庭から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
6
「ティールームの誕生が趣味の黄金時代をもたらしたかどうかは断言できない。だが、少なくとも19世紀末から20世紀初頭にかけて、新しいタイプの趣味が「美の思想」として根付こうとしていたことは間違いない。モラルという糖衣に包まれた論破し難い、卑近なテーマである「趣味」が、いわゆるご婦人のたしなみを突き抜け、その内に禁忌として秘めていた舌感を美覚へと変えたとき、近代の置き忘れたアポリアとして浮上する…人類が紅茶を楽しむようになった歴史は、意外なほどに浅い。ましてティールームの誕生が、わずか百年前の出来事であった」2023/06/12