出版社内容情報
『仮面の告白』生成前夜の未生の作家三島自身が企画した幻の作品集。没後50年、手書きで残された本人の構成案を忠実に再現。井上隆史による詳細解説を付す。
内容説明
「僕はどこにゐてもその場に相応しくない人間であるやうに思はれる。」自決から50年、いま明かされる23歳の煩悶と野心。『仮面の告白』前夜、未生の作家が編んだ幻の自選集。
目次
第1部 評論(川端康成論の一方法;川端康成氏の「抒情歌」について ほか)
第2部 詩(小曲第一番;小曲第二番 ほか)
第3部 小説(短篇集;恋と別離と;婦徳;エスガイの狩;朝倉;菖蒲前;贋ドン・ファン記)
補遺(扮装狂;バルダサアルの死)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
176
久々の三島由紀夫、没後50年幻の初期作品集、興味深く読みました。三島由紀夫は澁澤龍彦と親交があったり、プルーストを読んでいたり、色々と接点がありました。2020/03/29
くまさん
22
「東京駅へむかふ省線のなかで、恋や別離といふ言葉に何一つ値ひしない自分を思つた。何が恋だ。たゞ一度見たきりの女ではないか。従つて何が別離だ。……模倣であり観念であらうと、悲しみと喜びは一度(ひとたび)確実に僕自身のものであった」(「恋と別離と」)。「物そこに在るとき既に花咲ける也」「是を聞きて霜置ける菊の如く朝かげにきらめけるよき人の眼は美し」(「詩人の旅」)。23歳の文学青年に満ちる言葉とイメージが、これほどまでに色めき立ち、哲学的な思考とも響き合っているということ。言葉を生きた人は言葉に生き続ける。2021/01/02
コーギー
5
本当に器用な人だったのだなあ。あれだけヴァラエティに富んだ作品をこんな若くして書いているとはね。それだけに詩神は自分に憑いていないということをよくわかっていたそうで。「詩のごときもの」はいくらかの才能さえがあればかけるんだよ、という具合に。 詩と言えば、戯曲「サド侯爵夫人」に非常に詩的な長台詞があるが、あれもまさに三島の得意とするところの「詩のごときもの」だったと改めて思いなされた。 詩が書けないから、「詩のごときもの」を小説や戯曲に諧謔的なニュアンスも含ませながら挿入する。コムプレクスが垣間見える。2020/04/29
御庭番
2
言葉が昔の書き方で読むのに苦労しました。 三島節の古典作品みたいな話がとても面白く、できたら現代語に訳し直したもので読みたいな。 【図書館で借りました】2020/07/30
belle
1
未熟に感じる部分もあるものの、楽しく読んだ。 「菖蒲前」と「扮装狂」がお気に入り。 "僕はキラキラした安っぽい挑発的な華奢なものをすべて愛した。" とても、わかる。2020/12/13