市(まち)に虎声あらん

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  • サイズ B6判/ページ数 546p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784582835281
  • NDC分類 933
  • Cコード C0098

出版社内容情報

黙示録的な雰囲気の漂うサンフランシスコを舞台に、不安と妄想に引き裂かれる自我の怪物――。1952年、弱冠25歳の「純文学作家」ディックが書いた幻の傑作処女長篇。山形浩生氏激賞!

内容説明

アカ狩りがはびこりレイシズムとセクシズムの壮絶な暴力が横行する街。核戦争の恐怖に覆われた末世澆季、ハルマゲドンを預言する黒人カルト教祖の荘重な声が響き渡る…異常なまでの外見偏重とその裏返しの内面の歪み、肥大化した自我のケダモノと化した青年の破滅と現実への帰還を描く「カフカ的パルプ・フィクション」。ディック二十五歳の処女作。あまりの過激さゆえ長く筐底深く沈めることを余儀なくされ、死後四半世紀を経てようやく日の目をみた問題作。待望の日本語版。

著者等紹介

ディック,フィリップ・K.[ディック,フィリップK.] [Dick,Philip K.]
作家。1928年12月16日米国シカゴ生まれ、幼時にサンフランシスコへ移った。カリフォルニア大学バークレー校を中退後、レコードショップの店員のかたわら創作活動を始め、最初に短編が売れたのは1951年(雑誌掲載は1953年)。1963年『高い城の男』(ハヤカワ文庫SF)でヒューゴー賞を受賞し、人気SF作家となる。1982年3月2日に急逝

阿部重夫[アベシゲオ]
総合誌『FACTA』発行人兼編集主幹。1948年東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。日本経済新聞社で社会部、整理部、金融部、証券部記者、論説委員兼編集委員、欧州総局ロンドン駐在編集委員などを経て、日本新聞協会賞を二度受賞。退社後にケンブリッジ大学客員研究員。月刊誌『選択』編集長を務めた後、2005年11月にファクタ出版を設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

41
ディックの幻の処女作。粗削りながらも暴力に彩られた厭世観にギリシャ神話、仏教、禅などによる哲学的思想が凝縮された上で裏打ちされています。依存型の姉と母に支配され、差別用語が当たり前のように使われる世界に違和感を感じ、家庭にも馴染めないスチュアート。黒人が教祖で世界の終末を予言する宗教に救いを求めるものの「救えるのは自分自身だけだ」と答えられただけだった。自己に閉じ籠るが故に圧倒的に孤独な魂と生き辛さの描写が痛い程、伝わってくる。だからこそ、片目を失い、何もかもを清算し、悟った様子が余計に胸を打つのだ。2014/08/14

Vakira

32
ディック25歳の初の長編小説でSFではない青春小説。いや純文学。文学と小説の違いは特に明確な棲み分けはない。では勝手に定義する。僕は考えさせる小説、発問小説を純文学と定義した。僕が読んだディックの純文学4作目。長編処女作にして凄い発問力。遺作の「ティモシー・・・」ではキリスト教の司教の話だがこの1作目から宗教を問う。神父の教えと行動の不一致。偉大な教祖も人間である。理想と現実、虚偽と真実。宗教と現実、実はこのテーマが遺作に繋がっていた。ディックの書きたかったのはSFではなくこのテーマだったのか~(≧∇≦)2018/02/21

けいちゃっぷ

12
少し前にDVDで『ファイブ・イージー・ピーセス』を観たばかりなので、余計に主人公のいらだちや絶望などがニコルソンが演じたボビーとダブる。 それにしてもディックが宗教に傾倒するのは晩年かと思ってたが、すでにこの実質的処女作でも重要な要素として出てくるとは。 自己チューとしか思えんほどに主人公の内面の孤独さがヒリヒリと伝わるし、宗教(あるいは教祖)にも見放された主人公が、片目を失い(あるいは聖痕を得て)最後はすべてに悟ったかのような様子が、逆に逃げ場のない絶望の深さを表しているようで胸を打つ。 550ページ 2015/09/30

すけきよ

11
処女長編らしいけど、内容はSFではなく普通小説。電気屋に務める画家崩れの男。妻とはちょっとギクシャクし、仕事にも不満がある。そんな中、世界終末戦争を唱えるカルト教団に興味を持ち……って、いつもどおりじゃん(笑)SFにしなくちゃいけないというバイアスがない分、物語は筋が通っている。終盤の地獄巡り的展開は迫力があり、それを経ての解脱とも思えるラスト。自分の中だけで世界が完結してしまうある意味「セカイ系」な展開は後に通ずるものがあるのかな。このへんのインナースペースをSFに転換しただけかも、というのは興味深い。2013/08/26

またの名

5
ディックの神秘的啓示もとい妄想体験をSF要素抜きでやったらこうなった。実際の時系列的には本書の方が先で、SFの方が後に追加されていくことからも、かなり初期からその気のあった作家だったのがわかる。平凡な日常に収まり切らない高邁な何かへの憧憬を抱きつつも、世界の終りの予言という現れ(仮象)の背後には、救済を約束する究極のヌーメノンの代わりに仮象の崇高をはぎ取られたセックス&バイオレンスもどきだけが、終わりなき日常だけがあるという事実を知ることになるお馴染みの系譜の先駆者に、ヘルダーリン的な教養小説を連想した。2013/12/10

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