内容説明
読書は享楽、怠け者の怠け仕事。功利流からは渋面され、経世家からは軽蔑されても、好きに徹するのが一番最高。読書と銀座をこよなく愛した町っ子魯庵が語る明治・大正の東京物語。
目次
モダーンを語る
銀座と築地の憶出
窓から眺める
銀座繁昌記
下谷広小路
東西愛書趣味の比較
出版上の道徳
新著を閑却するはホントウの読書家に非ず
万年筆の過去、現在及び未来
ヲーキング・ステッキ
煙本
喜劇標札蒐集
初めから珍本である雑誌
読書放浪
釈迦と基督とマルクス
上下思想とルパシカ思想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
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日本人が昔から芝居気があり野次性があって、要でも無い事に見えを切ったり、買わずともイヽ喧嘩を買ったりする(18頁)。銀座は東京でこそ一番賑かで一番美くしいモダーンの中心地だが、日本を憧憬する外国の観光客が第一に裏切られるのは銀座である(56頁)。銀座の本屋――稲田政吉と兎屋と 鳳文館(105頁~)。読書家と蒐集家とは違ってる(162頁)。愛書家は読書家とも蒐集家とも違ってる(163頁)。読書に死んだのと、活きてるのとある(195頁)。かびの臭いをかいでるのは死んだ読書。 2014/06/26
式
0
ジャーナリスト的な観察眼や円熟した文章は凄いけど内容は結構平凡。しかし時々現れる日本文化への慧眼、流行への柔軟さ、逆説的な視点は注目に値する。現代の私にとって興味深い記述は、日本文化における西洋思想のファッション的輸入や文化の雑種性への着目や宗教論などで、どれも文学者らしい枝葉の多い文だが、その着眼点は鋭いものである。最後の『上下思想とルパシカ思想』は一個の文化論として非常に面白くて啓発された。中弛みのある本書を読んだ労力もお釣り付きで報われたものである。2022/03/18