感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
59
『グラマトロジーについて』の英語版序文として書かれたデリダ論。作者はニーチェやハイデガーをデリダの先行者として、彼らとの関連から、存在に意義を認めたいという論理の内部で言葉を循環させてゆく「形而上学の『閉塞』について語」り、同時にその閉塞を破ろうとする時にもその円環の内部に囚われているというデリダの哲学の構造を描き出します。加えてそのデリダのテクストの戦略と狙いが哲学史的に、フロイトとの関係から、また同時代のフーコーやレヴィ=ストロースとの類縁性や差異から的確な言葉で捉えられていて大変勉強になる本でした。2022/03/18
白義
17
若きスピヴァクが当時の知的流行の震源だったデリダの英訳書に付けた序文、というライトな位置付けを越え、俊英の問題意識と熱気がこもった白熱の論考。ニーチェやハイデガーといった大陸哲学の伝統を堂々解読し、デリダの脱構築に繋がる哲学史のようなものを描き、さらに脱構築という方法の射程や輪郭を示している。「抹消された痕跡」という表現で存在や主体、記号の中にそもそもある他者性、あるいは「ずれていく」特性を示し、それを指摘するに好適な文体や発想までいかにデリダがフロイトやニーチェから継いだかまで明晰に論じている秀逸な解説2016/02/27
またの名
8
こんなものをデリダの本文の前に読まされた当時の米国人達が可哀想。「スピヴァクの序文は読めたもんじゃない」と読者が言うのがお決まりだったとラパポートが報告するように、難解な脱構築主義の震源をスッキリ整理させることと、明晰で強力な西洋思想家たちが悉く陥ったロゴス中心主義の罠を避けようとする複雑な脱構築の戦略の間で揺れるかに見える生々しさもまた、歴史的ドキュメントとしての本書の一面。おフランス思想研究の最前線を突っ走っていたインド人女性による当時としてはハイコンテクストな導入も、現代ではまた別なふうに読める。2015/01/08
hitotoseno
7
スピヴァクが『グラマトロジー』英訳四十周年のついでに改訳をしたんだけどそれがあまりにひどいもんで序文を寄せたバトラーともども味噌糞に貶されてるって話を訊いたはものの英訳なんて到底読む脳は持ち合わせてないから悔し紛れにじゃあそれは最初からそうだったのか確かめてやろうじゃねえか、と思って読んだのだが真っ当なデリダ論である。序文が備える問題をデリダに即しながらメタ的に論じつつ単なるデリダ論に陥らずニーチェやハイデガーといった哲学の破壊者たちがその企てのもといかに成功しかけつつも失敗してきたかを丁寧に論じている。2016/04/09
もJTB
7
フッサールに対してはデリダは“従いすぎて破綻をみつける”という普通の脱構築をするけどニーチェに対してはニーチェを一貫した立場として読むハイデガーを通して破壊するという迂回路を使っており更にラカンに至っては処女膜や散手という概念を勝手に加えてもう破壊するのもやめファロス無視して別のゲームを勝手にはじめている(ただしスピヴァクはこれをも解体と読んでるので議論としては破壊ということになっている)。という事を書いてると再々読してやっと分かった……。2014/02/23