出版社内容情報
女性の味方であり続けた詩人・吉原幸子。いまも若い女性から支持される作品群を紹介し、写真と自筆原稿でその生涯をたどる。巻頭詩:谷川俊太郎、インタビュー:松本隆ほか。
内容説明
東大仏文科卒業後、劇団四季の女優となり、その後詩人に。透明でみずみずしい言葉と圧倒的カリスマ性で現代詩をリードし、愛のために歌い続けた―その作品と生涯をビジュアルで紹介。
目次
巻頭詩 まるのままの魂(谷川俊太郎)
第1章 詩人・吉原幸子ができるまで
第2章 詩集より(幼年連祷;夏の墓;オンディーヌ;昼顔 ほか)
第3章 「ラ・メール」の時代
第4章 舞台・朗読・合唱
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
96
詩は夢なのか。詩人、吉原幸子のバイオグラフィー。写真も詩も豊富なのが良い。彼女の生涯がギュッと詰まっていて駆け足ながら吉原幸子という存在をフィルムを通して体現したかのようだった。詩集も刊行順に紹介され、その言葉の変遷を感じながらその想いの行方を追う。端的な言葉は、読み手の共感を鷲づかみする、優しく、美しく、大胆に。現実の儚さを夢の如く詠う14歳の作品に驚かされた。初期の純粋なものを求め掴もうとするような自我の切望は、やがて周りの痛みや傷へ寄り添うものへ。それはどちらも素直さに満ちた心で生を言祝ぐかのよう。2023/10/07
trazom
96
吉原幸子さんは、新実徳英先生や木下牧子先生の合唱曲の作詞者として知っているだけだったので、本書で、改めて、その生涯や詩作の全容が理解できた。写真に写る彼女の目力の強さに驚く。幼少期から全甲の秀才、美人、東大卒、劇団四季の女優など、常に他人の目を意識して優等生を演じ続けてきた人だからこそ、厳しく錐で揉むような鋭い言葉で自分を見つめることができたのだろう。でも、お母様を亡くされた晩年に見せる揺らぎに、この人の人間的な一面を見る。棚沢永子さんは「厳しくて、優しくて、ひたむきで」と題してエッセイを捧げている。2023/08/14
れっつ
42
吉原幸子という詩人がいたことは朧げながら知っていたが、彼女の人生についてはこの本で初めて知った。作詞家・松本隆氏が彼女を絶賛する記事を見て、急速に惹かれた。彼女の人生航路の間に、様々な写真の上に書かれた命迸る魂の詩は、どれも衝撃的で、何度も繰り返し読む。少女時代から瑞々しく勝ち気で凛とした美形、そして女優だった彼女が紡ぐ言葉は、時として茨木のり子の詩を彷彿とさせる強さを感じさせる。一方で離婚し一人子育てする母である自分や、無条件に愛する息子への愛も溢れ、或るひとりの女の一生は、清々しい痛みに満ちていた。2023/07/30
みつ
22
表紙の伏目がちの、しかし強い意志を感じずにはいられない短髪の女性の写真に、眼が釘付けになる。吉原幸子は半世紀以上前から読んでいるが、詳しいプロフィールはこの本で初めて知る。高校生時代からのずば抜けた美貌、「概ね全甲」の成績、東大卒業後は劇団四季で主役を務める、という輝かしいキャリアは、一方で棘を隠し持った孤独な詩の世界を傍に置くと、むしろ居心地が悪かったかもと思わせる。後年まで多様な表現媒体に身を置きつつも、「現代詩ラ・メール」を創刊。表紙写真で持っているのは似合いそうな煙草ではなくペンというのは象徴的。2024/06/04
紫羊
21
「現代詩ラ・メール」を、若い頃に愛読していたはずなのに、その頃はもっぱら新川和江さんの詩ばかり読んでいた。この歳になって吉原幸子さんというのが少し気恥ずかしい。何て瑞々しくて透きとおった言葉たちなんだろう。子どもや生き物を詠んだ作品が好き。2023/09/22