内容説明
一冊の本が旅する者の運命を変えた。金子光晴の放浪生活足跡をたどる。
目次
1 パリよ、眠れ
2 どくろの杯
3 南洋パラダイス
4 放浪ユートピア
5 馬来スマトラ紀行
6 欧羅巴遊記
7 東へ、西へ
著者等紹介
横山良一[ヨコヤマリョウイチ]
写真家。1950年東京生まれ。70年から、アメリカ、インド、ネパール、アフガニスタン、アフリカに長期滞在。80年から写真家として活動を始め、83年、第二十回太陽賞受賞。世界を旅して、「ポップドキュメンタリー」というコンセプトで写真を発表し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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八百
13
反骨精神…そんな生易しいもんじゃない、人は彼のことを「狂骨の詩人」と言う。その放浪と抵抗の人生、100年も前の日本にこんなめちゃくちゃな人がいたというのは嘆くべきかはたまた喜ばしいことなのかは敢えて論じない。しかしあの「深夜特急」のルーツとも呼べる紀行文は私たちなかに眠るボヘミアンの血を沸き立たせる、旅の内容はまぁ薦められたものではないが大切なのはその精神だ。「かへらないことが最善だよ!」… エトランゼになりたくて人はまた旅に出る。しかし偶然か必然か?最近何かとバトゥハパがひっきりなしに私を誘っている2014/10/08
お萩
5
詩人というのは旅ひとつとっても「詩人」なんだなー。不倫した妻を置いて、ではなく連れて行くのがもう自分の理解を超えている。絵師として旅費を稼いだというだけあって絵の色使いなども魅力的。2016/02/12
こめんぶくぶく
3
逃げるように妻の三千代とともに世界放浪に出た金子光晴。「かへらないことが最善」という言葉からそれは始まった時点ですでに「旅」ではなかったのだろうと私は思う。旅絵師として旅費を稼ぎながらの綱渡りギリギリの生活。旅などという安穏としたものではなく、後戻りできない生死をかけた「生き様」。「賽は振られたのさ」という言葉がしんと音もたてず胸を突く。様々な地で、生きることのあぶなっかしさを皮膚一枚でうけとめ、鼻腔をひくつかせ感性を奮い立たせた詩人の視線に引きつけられた。なんてエネルギッシュで奇天烈な人生。2016/02/21
もち
2
金子光晴を知らなかったので興味深く読んだ。春画の取り上げられ率高くない?? 最貧の男性にも女性は搾取されていたんだなぁとちょっと思った。写真が雰囲気を盛り立てていてよかった。2024/08/21
アカショウビン
1
「マレー蘭印紀行」を読みたいと思っていたら、先に本書にたどり着いた。写真が味わい深い。怪しい上海。「うつくしいなどという言葉では云足りない。悲しいといえばよいのだろうか。」南洋の海。スラバヤでの金子の写真は柳沢慎吾風で怪しい。奥様は人形のようだ。ヨーロッパではジプシーたちを羨むような凄まじい貧困の中にあったようだが、帰途にまたマレーのバトパハに寄る。「…土地の体臭とでも言うべき、人間以外のものまでみないっしょくたになった、なんとも名状できない漿液の臭気に…ああ、この臭いと…南洋のいっさいが戻ってくる…」2024/12/26