内容説明
19世紀末イギリスで創設された私家版印刷工房の全歴史。書簡・日記や未刊資料を渉猟して、ケルムスコット・プレスの歩みをたどり、創設者ウィリアム・モリスの書物芸術の理念と実践を余すところなく論じる。
目次
第1章 ヴィクトリア朝時代の印刷事情
第2章 モリスと書物の芸術
第3章 ケルムスコット・プレスの創設
第4章 ブック・デザイナーとしてのモリス
第5章 書物の装飾
第6章 ケルムスコット・プレスの運営
第7章 三点の書物の成り立ち―『折ふしの詩』『プロテウスの恋愛抒情詩と歌』『黄金伝説』
第8章 ケルムスコット版『チョーサー作品集』
第9章 ケルムスコット・プレスの閉鎖
第10章 モリスとケルムスコット・プレスの遺産
付録(エマリー・ウォーカーの講演〈一八八八年〉;ケルムスコット・プレスの経費;ケルムスコット・プレス刊行書目一覧)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
83
豊富な写真と文によりケルムスコット・プレスの魅力が語られている。ケルムスコット・プレスの書物が紙、印刷、インク、装幀、タイポグラフィ、ボーダー、挿絵、文頭のイニシャル、木の葉のオーナメントが特徴。 例えばタイポグラフィはフォントだけでなく行間の問題もあり、職工達が行間を無意識に踏襲した試し刷りからはアンバランス感が有り、その時(ピリオドの後の大文字の「M」の幅を持つゆるい空白の空間がある1ページ)の写真が出ていて完成状態ではなく試行状態が載せて有ることが貴重で一見して理解しやすい仕掛けがあるのが良い。2023/05/14