出版社内容情報
村瀬 秀信[ムラセ ヒデノブ]
著・文・その他
内容説明
1998年、日本一に輝いた球団があった。ファンは「これからの黄金時代」を信じていた。でも、なんで…。プロ球団最多の黒星を重ねる最弱球団ベイスターズ、その関係者たちから、証言を聞き歩く筆者。「横浜の伝統とは何か」「なぜ優勝できたのか」「なぜ弱くなってしまったのか」「今後どうすればいいのか」。当事者たちの愛憎入り混じる証言と、名もなきファンたちの思い、そのすべてを丁寧に紡いだプロ野球ノンフィクションの金字塔。これは、多くの敗戦と奇跡の様な一瞬に生きた、選手たちとファンの群像劇だ。
目次
第1章 1998年
第2章 最下位
第3章 残された者たち
第4章 マルハと漁師
第5章 横浜ベイスターズ
第6章 “もののけ”の末路
第7章 球団のDeNA
第8章 ホームゲーム
文庫版最終章 234敗の追記
追録 村田修一が見ていた世界
著者等紹介
村瀬秀信[ムラセヒデノブ]
1975年神奈川県生まれ。茅ケ崎西浜高校野球部卒。全国を放浪後、出版社・編プロ勤務を経て独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちはや@灯れ松明の火
38
続くなれぬ理由を知った、名前を変えて進め。38年ぶりの彗星に沸いた歓喜は遠く、散り散りに消えゆく星々、マシンガン兵どもが夢の跡。クジラと呼ばれた頃からの豪快かつ大雑把な気質、下手くそすぎた取捨選択と別れの作法、ただ波留の夜の予言の如し。最善と思われた良縁からの暗転、無情に変わる監督と外に羽ばたく選手、セ界に打ちのめされて負ける意味を知った。夜空を埋めた黒星に宿る涙の記憶、遺伝子に刻まれた宿業に近い愛しさ、ありがとう悲しみよ。でも本当は勝ちたい、アイラブ横浜、青に染まったスタジアムでは誰もが幸せを願ってる。2021/01/26
たかやん
34
悲哀に満ち満ちている。ぬるま湯体質のチームがやっとのことで98年優勝したのも束の間、更なる暗黒へと転げ落ちていくのだから。どうしてこうなったのか?目まぐるしく変わる監督人事、行き当たりばったりのドラフト&トレード、功労者への冷遇…etc.それら様々な要因がもたらしのはチームへの愛着の喪失、ひいてはチームのために死ねる土壌の喪失だ。他チームファンであっても、本書を通じてTBS時代の闇の深さを知るほど、当時の横浜ファンにとってハマの番長=三浦大輔がどれだけ心の拠り所だったのかを窺い知れます。2019/02/23
fwhd8325
32
「巨人の星」で星飛雄馬のライバル、花形は阪神へ入団し、もう一人左門は大洋に入団していることからも、ホエールズは人気球団であり実力があった球団だったと思う。ホエールズファンも同級生の中にいた。この著書は、ホエールズファンの自虐の書のようにも感じるが、その思いは、はるか組織論にも及んでいる。著者の取材は実に細部まで踏み込んでいると思う。知らなかった人物像にまでそれは現れている。弱くなるべくして弱くなる。その全貌といってもいいのだろう。2016/08/04
ようはん
17
1998年の優勝後に急激に弱体化していった横浜ベイスターズ。その要因として短期間での主力選手の離脱、特に正捕手で野手と投手の繋ぎ役である谷繁が去ったのが大きいとあるけど大元は選手、監督コーチ、フロント側らのすれ違いにあると感じたな。93年の駒田獲得によるベテラン陣の粛清は新陳代謝で98年の優勝に繋がったというが結果的には功労者を大事にしない伝統を作ったというのも印象深い。カープファンからの視点だとかつての江藤、金本に近年の丸らの移籍の苦難を思い出すし逆に會澤や菊池が残留してくれた事にありがたみを感じる。2020/02/03
はら坊
16
ホエールズ―ベイスターズについて、「負け」に焦点をあてたノンフィクション。著者は大のベイスターズファンである。 数多くの関係者へのインタビューと著者のブラックユーモアあふれる文体が、読者を「最弱球団」の歴史へといざなう。 良くも悪くもファミリー気質だったゆえに低迷したホエールズ、一匹狼たちが切磋琢磨しながら栄冠をつかんだ1998年、権藤監督と選手たちのボタンのかけ違い、TBSに振り回された山中“GM”の苦闘、「継承と革新」をかかげたDeNAによる改革―など、汗と笑いと涙の人間ドラマがつまった快作。2020/08/19