出版社内容情報
没後も語り継がれる美しい歌姫だった祖母を持つ歩。祖母と似ても似つかない容姿がコンプレックスで、他人の美貌に辟易し、なるべく目立たぬように生きていた。しかし、歩の運営するファッションブランドが経営困難な状況に陥り困っていたところ、モデルの穣司と出会い……。自らの弱さに目を瞑ってきた人間たちが一歩ずつ成長する姿を丁寧に描いた物語。
内容説明
国民的歌手だった美しい祖母は、自分とは似ても似つかず超えられない存在。常に比較されてきた歩は他人の目を恐れて目立たぬよう生きていたが、経営するファッションブランドの人気が低迷しデザイナーの相棒にも見限られ、最悪の状況に陥る。そんな折、仕事を失いかけているモデルの穣司と出会う。歩のブランドの建て直しを穣司は強引に手伝いはじめるが…。弱さを抱えた者たちが成長する姿を丁寧に描いた物語。
著者等紹介
彩瀬まる[アヤセマル]
1986年千葉県生まれ。上智大学文学部卒業。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アッシュ姉
65
好きな作家さんなのに苦戦。ひと以外の目線語りが苦手なので真珠が喋ることにどうにも違和感がぬぐえず、加えて主人公がコンプレックスの塊でこれまた苦手。薄い本だが、かなり時間がかかってしまった。2023/08/15
piro
39
伝説的な歌姫・真砂リズを祖母に持つ真砂歩の成長譚。ファッションブランド経営が上手くいかず冴えない日々。義祖父が主催するパーティーで出逢ったモデル・穣司と関わるうちに、祖母への過剰な憧れが呪縛となっていた事に気付きます。自分の進むべき道をどう選ぶのか、結局は自分の覚悟が全てなんだろうな。最後は清々しい読後感でした。ストーリーはノスタルジーを感じる程平凡。キシとカリンの会話も絡め、よく考えると深みは感じられますが、個人的には彩瀬さんが描くもっとゾワゾワする作品が好みです。2022/12/14
よっち
38
没後も語り継がれる美しい歌姫だった祖母リズがコンプレックスの歩。運営するファッションブランドが経営困難な状況に陥り困っていたところ、モデルの穣司と出会う物語。祖母が持っていた真珠を語り手にして紡がれてゆく、自らの弱さに目を背けてきた人々が一歩ずつ成長する姿を丁寧に描いたストーリーで、意識するあまり祖母と似ても似つかない容姿や、他人の美貌に辟易して自信や自分らしさを見失っていた歩でしたけど、視点や意識を変えればまた違うこともいろいろ見えてくるんですよね。終盤の母親の存在やその言葉もいい感じに効いていました。2022/12/08
エドワード
34
真砂歩はファッションデザイナー。親友の共同経営者に去られ、ブランドは苦戦中。歩が頼りにするのはモデルの穣司だ。歩の祖母は昭和のアイドル歌手・真砂リズだった。優しい祖母の姿と過去の中傷記事の落差に戸惑う歩。本文中に南沙織の名が出て来る。私は何となく真砂リズに山口百恵の面影を重ねてしまう。今年は彼女がデビューして50年。時の経つのは早い。あの頃、芸能界はまさに光と影の世界だった。真砂リズのお守りだった黒蝶真珠のキシは、模造真珠のカリンとともに、今はテディベアの眼として歩を見守る。歩と穣司の幸福を切に願う。2023/01/30
遙
20
ページ数は薄いながらも内容は濃厚だった。国民的歌手だった祖母をもつ孫の真砂歩と、その祖母がいつも身につけていた黒真珠[キシ]が繋ぐ、祖母、真砂リズの過去と、現在の物語。歩は洋服のデザイナーだが、真砂リズへの劣等感に縛られ、思うような服を作れないまま事は悪化していく。そんな時、モデルの穣司との出会いで、歩は前向きになり始める。真珠が語り部になり、真砂リズの生涯を振り返りつつ、歩の運命も動かしていく様子を見て、誰かが大切に愛した物には命や自我が生まれるのだとも思わせてくれた。 まさに、珠玉な物語でした。2022/12/04