内容説明
2024年、鹿児島。県立南郷高校に通うマモルは、男子寮の次期寮長に指名される。下級生の指導や揉め事の解決など、マモルの負う役割は大きいが、なかでも、学生VR全国大会出場に向けてチームをまとめるのが最重要ミッションの一つである。昨年敗れた先輩たちの雪辱を果たすべく、準備を進めるマモルだったが、大会事務局の対応にある違和感を覚える。同じ頃、アマチュアVRの世界大会「ビヨンド」の存在を知り、自分たちの進むべき新たな道を見出していく。吉川英治文学新人賞作家による、近未来青春小説。
著者等紹介
藤井太洋[フジイタイヨウ]
1971年、鹿児島県奄美大島生まれ。2012年、SF小説『Gene Mapper』をセルフ・パブリッシングで電子出版。同年の国内kindle市場で、最も売れた文芸・小説作品となる。13年『Gene Mapper‐full build‐』で文庫本デビュー。15年『オービタル・クラウド』で日本SF大賞、星雲賞を同時受賞。19年『ハロー・ワールド』で吉川英治文学新人賞を、22年「マン・カインド」で星雲賞を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
63
(2023-74)【図書館本】SF作家の藤井さんが描く爽やかなジュブナイル小説。鹿児島県立南郷高校に通うマモル。親元を離れた彼が暮らす蒼空寮は前近代的な「伝統」が行われている学生寮。そんな彼等がアマチュアのVR世界大会にエントリーする。若い彼等が思い思いに語る最後のプレゼンテーション。バリバリの鹿児島弁が随所に出てくるけど、藤井さん自身が奄美大島の出身なんですね。コンピュータとかVRの専門的な知識がないので理解が及ばない所もあるけれど、面白かったです。 ★★★★2023/07/17
Mc6ρ助
22
『「奨学金って、返さなければいけないんですか」「当たり前じゃがな!」今度は、安永が目を丸くする番だった。「ええっ?返すのって、ローンですよね」(p46)』いつもの如くまだ我々には未来があるんじゃないかと希望を与えてくれる藤井大洋さん、今回は仮想現実のコンペティションに挑む高校生たちの青春群像劇、辻村深月さんの「この夏の星を見る」と似た読み心地はこの時代が求めたものと解釈したい。ところでこれがSFかどうか知るスベを爺さまは持たない。2023/08/19
もえたく
17
3Dプレゼンテーションを競い合う「VR甲子園」等を目指す鹿児島県の全寮制男子高校生らの青春IT成長小説。著者らしくIT用語から、HFT 高頻度取引等など聞きなれない言葉まで頻発し戸惑うが、様々な悩みや不満を抱えた高校生らの物語として捉えると読みやすく、彼等を応援したくなる。大人になった彼等はどんな世界を作るのだろう。2023/09/23
スイ
13
鹿児島の高校生たちが、VRで世界に挑む! パソコン周りのことや仮想通貨のことなどは正直ついていけないのだけど、それも気にならずに楽しく読んだ。 みんな愛しくてねえ…! 自分がいる場所を少しでも良く変えていこうとする主人公がいい。 その方向性や手段に悩みはするのだけど、良く変えられるものは変えるのだ、という前提はもはや無意識に近い揺るぎなさ。 結末はだいぶ甘いとは思うものの、懸命な子どもたちの笑顔を、同じ10代の読者に見せてあげたいと思うので、甘くてもいいのだ。2023/12/14
本の蟲
13
作者代表作『オービタル・クラウド』と似たタイトルだが内容は無関係。むしろ普段の作風とは真逆の学園青春モノ。近未来が舞台でありつつ、旧態依然としたスパルタな男子寮で暮らす高校生の群像劇。VR甲子園で驚く他校の発想。国際大会で見る社会の無情と非情。迫る受験戦争。指導される側からする側へ。進学校にしては少々無知と感じた主人公だが、未来では常識が違うという側面が描写されていて、徐々に違和感も薄れていった。世界を変える物語ではなく、それぞれの成長と変化で世界が広がる物語2023/07/25