出版社内容情報
地獄変の屏風を画くため,娘を火にかける異常の天才絵師を描いた『地獄変』,映画「羅生門」で一躍世界に名を馳せた『藪の中』など,芥川王朝物の第二冊.彼は古い物語の中の人物を見事に近代の中に蘇らせ得た.他に『運』『道祖問答』『袈裟と盛遠』『竜』『往生絵巻』『六の宮の姫君』『二人小町』を収める. (解説 中村真一郎)
内容説明
地獄変の屏風絵をえがくために娘に火をかける異常の天才絵師を描いた『地獄変』、映画『羅生門』で一躍世界に名を馳せた『薮の中』など表題作のほかに『運』『道祖問答』『袈裟と盛遠』『竜』『往生絵巻』『六の宮の姫君』『二人小町』を収める。王朝物とよばれるこれらの作で、芥川(1892‐1927)は古い物語の中の人物を見事に近代に蘇らせた。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
60
悲喜交々の人生満載の作品群。中でも洒落っ気たっぷりな『二人小町』は突出。黄泉の使いだって、嫌みも言いたくなるわなぁ。(笑)同様だが、少しひねりの効いた『竜』。子供たちの団扇がオチに絡むと思ったが、予想外れた。”鼻”ですよね~。(笑)対照的なのが『運』と『同祖問答』。物心、真の幸せを問いかけている感。後者の余韻を残す終わり方は印象的。”結末”という観点では『邪宗門』。『地獄変』からの継続性と対照的な娯楽性が興味深いも、あまりの”結末”がジレンマとなるなぁ。いつか何処かで”発見”されることを祈るのみ?!2018/02/16
優希
50
何度読んでも面白い作品ばかりです。王朝ものを集めていますが、読みにくさは感じません。古の香りが近代文学として昇華されているからでしょうね。中でも『地獄変』は強烈なインパクトがあり、好みです。改めて芥川は王朝ものが得意なのだと思わされました。2024/04/01
優希
48
王朝ものを集めた短編集です。古き物語を現代へと昇華していると思いました。娘に火をかけてまで地獄変の屏風を描く『地獄変』が好みです。2023/02/06
優希
45
面白かったです。王朝ものの名作揃いで引き込まれました。古い物語のはずなのに、現代に通じているように感じます。古典を見事に近代に蘇らせた作品集と言えるでしょう。2022/04/05
ほりん
40
芥川の王朝物の短編集。表題作のほかに,「運」「道祖問答」「袈裟と盛遠」「竜」「往生絵巻」「六の宮の姫君」「二人小町」収録。運命の皮肉,心の奥底の暗闇などが,雅な世界を背景に描かれる。妖しく美しい世界。今更にして,芥川の凄さに感じ入るばかり。「好色」の中の一節「…しかし平中の不幸なのは,いわば天才なればこそだね。…とにかく仕合(しあわせ)になるためには,御同様凡人が一番だよ…。」天才は大変なんだとしみじみ思った。2015/08/19