出版社内容情報
殺人事件の被害者と加害者。双方から事件について語られる、異色のミステリー。「エンターテインメントの域をはるかに越え出た力業である」と評され、事件の当事者の心理に深く食い込み、それらを圧倒的な描写力で表出させる著者の真骨頂が発揮された傑作。
内容説明
殺人事件をめぐる、加害者と被害者それぞれの独白。「殺意」は加害者がいかにして殺人者となったのか、「鬼哭」では被害者がどうして殺されたのかの思索が語られる。事件の当事者の心理に深く潜り込み、それらを圧倒的な描写力で表出させる著者の真骨頂が発揮された傑作。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年東京生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務を経て、88年、『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞の優秀作になりデビュー。96年、『凍える牙』で第115回直木三十五賞を受賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞を受賞。16年には『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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坂城 弥生
32
私には被害者は殺されても仕方ない勝手で無神経な男としかわからなかったけどな…2019/12/02
ちょん
27
すごい本でした。なんという幼稚な感想…。友人を殺した男の独白の「殺意」と、殺さた男の意識を失うまでの走馬灯を書いた「鬼哭」。殺意のラストシーンには震えたし、謎は謎のままだし。読み終わってから「鬼哭」の意味を調べならなんかすごくスッキリした(笑)2022/08/03
かおる
22
「殺意」が殺した側、「鬼哭」が殺された側の心理を細やかに描いていた。ストーリーはほとんどなく、心理描写だけで一冊書けるなんて本当にすごい。2020/11/19
うららん
21
乃南アサは学生時代読書にはまるきっかけになった作家の1人。10年ぶりに読みました。本作は兄弟のようで親友でもある二人の男が一方を殺し加害者と被害者となる。『殺意』は加害者となった真垣、『鬼哭』は殺された的場の心の声をずっと聞かされているような内容で決して楽しいものではありませんでした。★★☆☆☆2019/11/18
じゅむろりん
19
旧知の2人が殺人事件の被害者と加害者となる。殺した方の独白が「殺意」。指紋も証拠も隠さず、自己弁護もせず、罪を認めるが動機は完全黙秘。殺人者の過去と精神状態から犯罪者を理解して事件を完結したい関係者と殺意の醸成に魅せられ純粋な殺意を育てた加害者の関係が面白い。一方の鬼哭は、傍若無人に振る舞う男が刺されて死に絶えるまでの3分間を、形なき手記で克明に綴る。両者の人格と温度差の対比が、この小説の面白さでしょうか。「殺意」の続編が是非読みたいですね。2021/06/14