内容説明
苦労して働きながら予備校に通う、二十歳の高村小夜が自宅アパートで殺害された。中年男性の目撃情報と大金が入金されていることから、援助交際との関わりが捜査線上に浮かぶ。「こんなにつましい暮らしぶりで真面目な彼女がなぜ?」違和感を抱いた下谷署の刑事・目黒一馬は別の角度から捜査を開始する。小夜の両親はすでに亡く、なぜか祖母は頑なに遺骨を受け取らない。鍵は小夜の故郷にあると見た目黒の執念が、運命に翻弄された女たちの人生を浮き彫りにしていく。最後にたどり着いた、死の裏にある驚愕の真実とは。切なさあふれるミステリー。
著者等紹介
鏑木蓮[カブラギレン]
1961年、京都市生まれ。佛教大学文学部国文学科卒業。塾講師、教材出版社、広告代理店などを経て、92年、コピーライターとして独立する。2004年、第1回立教・池袋ふくろう文芸賞を、短編ミステリー「黒い鶴」で受賞。06年、「東京ダモイ」で第52回江戸川乱歩賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
348
初読み作家さん。読み終わった今になってやっと、タイトルの意味がわかります。プロットとしては目新しくないし、多少後出しジャンケン的なところはありますが、しっとりとしたミステリーに仕上がってます。みんな必死に生きようとしただけ、悪人が出てこないミステリー、というか。にしても「涙腺崩壊」の帯は…盛りすぎですね、双葉社さん?!2016/07/25
どんふぁん
209
2019年5月6日読了。随分積読してた本をやっと読みました。なかなかややこしい設定の物語でしたが、不幸な境遇が生んだ事件でただただ気の毒でした。推理は簡単でしたので、読みやすいミステリーだと思います。2019/05/06
紫綺
143
単行本にて読了。代理ミュンヒハウゼン症候群〜自分に関心を集めたいために自分の代理となる人を傷つける病気。世の中、色々な病気があるものだ。2015/08/07
イアン
136
★★★★★★★★☆☆節目の600冊目は鏑木連の長編。慎ましく暮らす二十歳の女子学生・小夜が殺された。現場となった自宅アパートからは、そこにあったはずの遺骨が消えていた…。苦学生を絵に描いたような少女はなぜ殺されたのか。背後に浮かぶ中年男性の正体とは。小夜が詠んだ3首の短歌から浮かび上がる美しくも儚き恋慕。そこを足掛かりに真相に迫る刑事・目黒の優しい眼差しが印象的だった。終盤に明らかとなるもう一つの「白砂」の意味とは。これほどの劣悪な労働環境がつい50年前の日本に存在していたという事実に、驚きを禁じ得ない。2024/12/07
麦ちゃんの下僕
123
オーディオブック+文庫本。高村小夜という20歳の苦学生はなぜ殺されたのか?その哀しい真相に下谷署の目黒警部が迫る物語。この作品における「白砂」は粉骨された遺骨のことであり、また終盤になってもう1つの意味を持つことが明らかに…秀逸なタイトルですね。被害者や犯人の“心理”を重視して捜査する目黒は、あのメグレ警視がモデルなんでしょうか!?…部下の山名とのユーモラスなやりとりも僕は好きです。ラストシーンは本当に切ないんですが…被害者に明らかな落ち度があることで同情しきれないため、帯の「涙腺崩壊」とはならず…残念。2024/12/05