内容説明
親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら、死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く―死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。
著者等紹介
湊かなえ[ミナトカナエ]
1973年広島県生まれ。2005年第2回BS‐i新人脚本賞で佳作入選。07年第35回創作ラジオドラマ大賞を受賞。同年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。08年同作品を収録したデビュー作『告白』は、「週刊文春08年ミステリーベスト10」で第1位、第6回本屋大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
939
湊作品はこれまでに『贖罪』、『告白』と読んできて、3作目だが、本編は他の2作と比べると数段見劣りがするようだ。高校生二人の手記を交互に配する手法、及びそこに開陳される彼女たちの、いかにも女子高校生らしい感性には一応のリアリティ(一抹の嘘っぽい感もなくはないが)が感じられるものの、ここに展開される世界はあまりにも狭い。本来は繋がりがなかったはずの事象が、いとも容易く結びあわされてしまうのである。意地の悪い見方をするなら、ご都合主義の謗りを免れないということだ。僭越ながら、私からすれば成功作とは言い難い。2018/06/15
遥かなる想い
780
本の帯に「人が死ぬのを見てみたかった」とあり、人目を引くので思わず購入して読んだ。物語は女子高校生の無垢な好奇心がもたらす事件の模様を 「湊かなえ」らしい筆致で描いていく。ただ由紀と敦子の交互の描写がともすれば混乱し、物語の緊迫感を発散させているような気がする。2012/04/10
風眠
679
(再読)人が死ぬ事にリアリティがもてないから、死というものに幻想を抱く思春期特有の心。親友が自殺したと言う転校生は、うっとりと死を語る。自慢話のようなその話を聞いた由紀と敦子は「人が死ぬのを見てみたい」と、それぞれ老人ホームと小児病棟でボランティアを始める。人が死ぬのを見たかったはずが、いつのまにか生きる事を想っている。繊細で壊れやすい心、大切な友達なのに親友と言い切れない臆病さ、世界は白と黒だけで出来ているわけではないこと、不器用だから遠回りして、少しずつお互いの苦しみを知っていく。これは友情の物語だ。2015/06/07
馨
679
告白ほどではなかったですがこちらも次の展開が気になりノンストップで読める面白さでした。2012/06/01
kishikan
477
他人の死を興味本位に語る女子高生。自分本位で独善的な考え方、でも群れから外れたくない若者達。一見、社会適合性がなく将来どうなってしまうのかと思わせる若者群像を描いているが、でも個々には心の優しさも垣間見られる。その矛盾を見事に文章化する湊さんの筆力は見事。少女二人の視点で描かれた小説だけど、そのずれと最後に収束(これって収束って言えるのかなぁ)するのが興味深いというか恐ろしい。あり得ないようであり得るかも?と思ってしまう妙がこの本にある。世のおじさん達に是非薦めたい。加え、解説を最後に読むのをお忘れなく!2012/06/27