出版社内容情報
誰もみたことのない衝撃の逆転裁判がはじまる――。フリーライターの湯川和花は殺人事件の裁判を傍聴するのだが、結審直前に衝撃的な被告人質問を目の当たりにする。左陪席の不知火春希裁判官が予想外の質問を被告に投げかけ、悲しすぎる事件の真相を自白のもとに晒して法廷の景色を一変させてしまう。こうした不知火判事の質問は「他に類を見ない質問」と法曹関係者の間で囁かれていた。
内容説明
真・逆転裁判「勇気を持って真実を答えて下さい」“どんでん返しの新女王”が放つ法廷ミステリー。五つの裁判を収録。
著者等紹介
矢樹純[ヤギジュン]
1976年、青森県生まれ。2002年に『ビッグコミックスピリッツ増刊号』にて漫画原作者デビュー。『あいの結婚相談所』『バカレイドッグス』などの原作を担う。12年、「このミステリーがすごい!」大賞に応募した『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』で小説家としてデビュー。19年、短編集『夫の骨』が注目を集め、20年に表題作で日本推理作家協会賞短編部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
212
裁判を舞台に検察と弁護側の攻防を通じて隠された真実が暴かれるリーガルミステリと、室内を動かず提示された証拠や証言だけで真相を推理する安楽椅子探偵物は水と油の関係だが、中立の立場である判事を主役とすることで巧みに合体させた。鋭い観察力で捜査や事前の証拠調べでも見落とされていた矛盾を発見し、唯一発言できる被告人質問を通じて裁判を鮮やかに逆転させる不知火判事の推理法は『黒後家蜘蛛の会』のヘンリーに通じる。裁判で無能ぶりを暴かれる検事と弁護士に嫌われ、全国を転勤するのも当然か。こんな裁判官こそいてほしいと思える。2022/12/03
いつでも母さん
179
ハイ!面白く読みました。判事が主人公って珍しい気がします。これはズバリ、タイトル通りです。連作短編5話。《他に類を見ない》質問をする不知火判事は変わり者のキャラなので、周りはやり辛いでしょう。その自覚が無いのも読み手はニヤリとしてしまいます。もっと読みたくなる感じです。2022/12/04
しんたろー
144
法廷ものの連作短編集…フリーライター・和花が様々な裁判を傍聴して記事にする形式で、判事・不知火の被告人質問で真相に辿り着く展開の5編。各話では冒頭で犯行の一部を見せ、和花が事件を調べ、法廷で不知火が「比類なき」推理で謎を解くという構成は安定した創りで読み易い。どの話にもミステリらしい工夫がなされていて、映像が目に浮かぶ描写も巧み。密室の謎解きなど本格ものっぽいテイストの作品もあるのが楽しい。不知火と和花のキャラの書き込みが薄いのが惜しいが、きっと続編で描かれるだろうと期待。やはり、矢樹さんは短編が上手い!2022/12/09
タイ子
141
5つの異なった裁判で誰もが出し得なかった推論を見事に証明する判事、不知火判事登場。普通のミステリ小説のように事件が起こり、容疑者は逮捕され被告人となって裁判に臨む。ただ違うのは、裁判の途中で裁判官の被告人質問に入った時、不知火判事の予想外の言葉によって事件の真相がどんでん返しとともに明らかになる。一話目で驚き、2話目から期待でゾクゾク。裁判の傍聴をするのが、WEBメディアの記者・湯川和花。傍聴マニアの2人の男たちの存在も見逃せない。こんな裁判なら傍聴してみたい。これは是非シリーズで読みたい作品だわ。2022/11/06
とん大西
122
こりゃあ、キレがあって面白い。法廷モノと言えば、佐方シリーズは検事、御子柴シリーズなら弁護士。常に両者バチバチの論理戦。そんな空気などお構い無しに事件の真相を突き止める法廷の主人公が彼らの一段上に座していた。裁判官・不知火春希。検事と弁護士と証人と被告人。長い長い彼らのやりとりの後に放たれる「比類なき質問」。それは事件の正体を露にし、被告人のやりきれない胸の内をも氷解させる。情念と仕掛けが絡みつく予想外の逆転劇。どの話しも面白く読めましたが、好みは第二章『生きてる理由』。二転三転する真の動機が…絶妙です。2022/12/31