内容説明
『あの坂道をのぼれば』―妻子を捨て女と逃げた男の28年ぶりの帰宅。男の思いは、あの日の駅のホームに漂着する。『タンポポの花のように』―廃墟の遊園地で見つかった笑顔の死体。女性が50年待ちつづけていたものは?『走馬灯』―亡くなったはずの父を見かけた。臨終の床で父が口にしていた妄想が現実となって…。切なくも希望に満ちたラストが鮮烈な表題作ほか、3篇を収録。
著者等紹介
高田侑[タカダユウ]
1965年群馬県桐生市生まれ。法政大学卒。現在は町工場に勤務。2003年『裂けた瞳』(幻冬舎)で第4回ホラーサスペンス大賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
to boy
35
高田郁さんと間違えて借りてきましたが、とても良かった。不思議な時間の朔行と孤独と愛の短編集。4つとも悲しい中に人の心の温かさを感じました。ちょっと他では味わえない温かな話でした。2018/01/18
kariya
30
失くしたものを探しに行こう。迷い込んだ隠れ里、背を向けた坂の上の我が家、微笑みながら死んでいた初老の女、他界した父の未来の記憶、二度と取り戻せないものを願う人々を、時に切なく時に暖かく描く、四つの話を収めた短編集。淡々とした語り口なのに、後からどれもじわりと沁みてくる作品は、静かに心を揺さぶり、秋の夜長にふさわしい余韻を残す。夢幻のように華やかでも艶やかでもないけれど、冷やりとした大気の中に一つ灯る明かりのような確かな余韻を。2009/10/04
あつひめ
29
あの世とこの世の空間に時を超えた広場があるような気がする。その広場に心がたどり着きたときに、会いたい人、伝えたいことがすーっと魂から離れて届くような・・・そんなことも起こりうるのではないかと思わせる作品だった。人の死に目に会ったことが無い私には、まだ想像でしかないけれど、恐怖とかではなく温かい気持ちになるのかもしれない。自分が旅立つとき、どんな思い出が心の中を駆け巡るだろう。ただ切ない・・・だけでない作品を書く高田さん。初読みですがとっても興味をそそられる作家さんでした。2011/11/13
やまぶどう
25
人は出会った人と別れ、手に入れたものを失い、喪失感とともに生きていく。そう思っていた。だからなのか、この本に収められた四つの短篇すべてに心をぎゅっと掴まれ、強く強く揺さぶられた。会えなくなってしまった大切な人に、これからまた会えるのかもしれない。失ったものも生き続けるのかもしれない。この作品はそう思わせてくれた。あああ、何だか救われたなあ。この作品に出会うきっかけをくださった読書メーターの皆さん、ありがとう。2009/07/30
coco夏ko10角
20
4つの作品収録の幻想系短編集。『タンポポの花のように』が特によかった。2018/06/05