出版社内容情報
あなたにこの謎は見抜けるか――。『珈琲店タレーランの事件簿』の著者、最高傑作! 大御所作家の遺稿を巡る、予測不能のミステリー。
内容説明
大御所ミステリー作家・室見響子の遺稿が見つかった。それは彼女が小説家になる前に書いた『鏡の国』という私小説を、死の直前に手直ししたものだった。「室見響子、最後の本」として出版の準備が進んでいたところ、担当編集者が著作権継承者である響子の姪に、突然こう告げる。「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思います」―。削除されたパートは実在するのか、だとしたらなぜ響子はそのシーンを「削除」したのか、そもそも彼女は何のためにこの原稿を書いたのか…その答えが明かされた時、驚愕の真実が浮かび上がる。
著者等紹介
岡崎琢磨[オカザキタクマ]
1986年、福岡県生まれ。京都大学法学部卒。2012年、第10回『このミステリーがすごい!』大賞の最終選考に残った『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』でデビュー。13年、同作で第1回京都本大賞受賞、人気シリーズとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
391
中堅ミステリ作家・岡崎琢磨さんの12年目の勝負作ですね。本書は現在を舞台に書かれた幻の処女作が40年後にベテラン作家の死後に遺稿として見つかり担当編集者が遺族の姪に隠された謎を解くべく読んでもらうという形で進行していきます。作中作のメインの登場人物は男女二人ずつの四人の若者達で内3人が心と体に傷を負いながら今も引き摺る事件の謎を追う長編ミステリーでユーモアは抑えめの落ち着いた風情の読み心地で終盤のどんでん返しによる意外な犯人の趣向が楽しく非常に面白かったですね。しかも一旦完結した後にさらなるサプライズが!2023/09/29
パトラッシュ
271
物語の核としての作中小説は珍しくないが、その作中作が全体の8割を占める異例の形式。しかも醜形恐怖に相貌失認、顔に残る火傷の痕とルッキズムによる低い自己肯定感を抱えて必死に生きてきた3人の幼馴染という深刻なテーマ。昔起こった決定的な事件の謎を探るべく動き出す彼らの行動がほぼ実話だとしたら、どこまでがフィクションなのかが最大の謎となる。思いがけない逆転劇が重なって明らかになる真相は強烈なサプライズに満ち、コロナ禍だからこそ可能だった入れ替わりトリックの妙もあり、ミステリ小説として非常に高いレベルになっている。2023/10/13
イアン
211
★★★★★★★★★☆ルッキズムをテーマとした岡崎琢磨の長編。往年のミステリ作家・室見響子の遺稿『鏡の国』。自身をモデルとしたノンフィクションとされ、身体醜形障害を患う女性の葛藤を描いたその作品から削られた〝エピソード〟とは…。大半を占める作中作はそれ自体で成り立つほどクオリティが高く、そこに隠された違和感を40年後(2063年)の姪の視点で探るという入れ子構造が秀逸だ。怒涛の伏線回収はこれぞミステリの醍醐味。タイトル、装丁、人物の名前に至るまで計算され尽くした物語を、ぜひ帯の前情報抜きで手に取ってほしい。2023/12/11
ナルピーチ
182
ミステリー作家・室見響子の遺作『鏡の国』を全編通した作中作として構成された物語。原稿から意図的に削除された部分がある。その謎を担当編集者と姪が小説を読み解きながら真実を明らかにしていく…。まさに反転!装丁すら伏線!とは上手く言ったもので最後まで存分に楽しめた。小説自体に込められた謎と作中作としてのミステリー。どちらも伏線が多く散りばめられており、点と点が線に繋がっていく様に頁を捲る手が止まらなかった。人はそれぞれに抱える悩みがあり、他人の悩みは自分の物差しでは測れない。そんな人達にも焦点を当てた良き一冊。2024/01/21
mint☆
114
2026年8月。少しだけ未来のお話。作家室見響子の遺作『鏡の国』には隠れたエピソードがあるのではないか、という長年の担当者の言葉に遺作の発表を一任された主人公が改めて『鏡の国』を読んでいく。小説の中に小説があるので2作品を読んでいるよう。作中作を夢中で読んでいるとふと元の時代に戻り、そういえばこれは作中作だったとハッとする。そんな風に読んでいたので散りばめられた伏線に気づけるはずもなく、言われてみればそうだったのかと最後の最後で見えていた世界が『反転』する。削除したエピソードは戻さない方が好みかなぁ。2023/10/07