出版社内容情報
金はないけど情はある、個性豊かな面々が揃う「おけら長屋」。新しい入居者として謎めいた女が引っ越してくるが……新展開の第九弾。
内容説明
金はないけど情はある、個性豊かな面々が揃う「おけら長屋」は今入も騒がしい。“赤鰯”と呼ばれる腰抜け武士の本当の姿は…。おけら長屋に越してきた謎の女が忽然と姿を消したわけとは。吉原に乗り込んだお満は男と女の深い情話を知ることに。お糸と文七が陥った苦境を知った長屋の住人たちは、陰ながら奔走し―。笑いと涙と人情が満載のシリーズ第九弾は、ますます充実の五篇を収録。
著者等紹介
畠山健二[ハタケヤマケンジ]
1957年、東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
177
九巻は今まで以上に人の繋がりを描いた佳作揃い…『まいわし』は石黒藩藩士・赤岩と鉄斎を中心に進み、純真と笑いのバランスが絶妙。特に”殿様”こと石黒藩主・高宗と万松のやり取りには爆笑!『おてだま』は長屋へ越してきた謎の女・お浅に与兵衛&徳兵衛が騙される話だが、中年男の急所を上手く捉えている。『すがたみ』花魁と髪結いの悲恋に、お満の実家の事情が絡み、切なく美しい良い意味で異色の出来。『かんざし』はお糸と文七の新婚夫婦が健気で好き。『うらかた』は前の話を受けて「合わせ技、一本!」の声を掛けたい綺麗な幕引きだった。2020/03/09
やま
161
本所おけら長屋9作目 2017.08発行。字の大きさは…中。 まいわし、おてだま、すがたみ、かんざし、うらかたの短編5話。 本所亀沢町にあるおけら長屋の住人が、おりなす泣けて笑えてしんみりする人情物語です。 私が読んでいる文庫本の表紙は、紫月花魁の花魁道中ですが、本の登録の表紙は、髪結いの清吉が紫月花魁の髪を結う所です。なぜ違うのか…? 花魁道中は、髪を結っている所と比べると、華やかで表紙にふさわしいが、物語的には、紫月花魁と清吉の秘めた恋を伝えたかったのでしょうか。→2020/10/31
のり
116
文七・お糸夫婦に降りかかった災難が極めて悪質。おけら長屋に越してきた「お浅」も渦中の人となるが…流石、長屋魂。文七の顔を立てるように影ながら動く。絶妙の塩梅。お満の兄が花魁狂いになり、店の信用を守る為に吉原へ乗り込み策をこうじたが、花魁の矜持や想いの前に心打たれ、成り行きに任せる事にするが、思わぬ結末に哀悼の意を捧げます。2018/11/04
アッシュ姉
100
傑作時代小説豪華三本立のラストを飾るのはホームのおけら長屋。ただいま~と我が家のように寛いで楽しめる安心感。やっぱり最高に面白い。万松の会話に笑いっぱなし。大好きな殿様の登場にテンション上がりまくり。いやだいやだと駄々をこねる姿にキュン!リアリティーなんぞそっちのけで、もっと頻繁に江戸にきて欲しい。次は心置きなく呑んで羽目をはずして大いに愉しめますように。真之介、お供を頼みましたよ!2020/10/22
ぶち
83
今作もたくさん泣かされました。花魁と髪結いの悲恋は、切な過ぎましたが... その悲恋を目の当りにしたお満。万造との仲に良い意味で大きく影響しそうです。久しぶりに登場したお糸ちゃん。女将さんとしてしっかり成長している姿に嬉しくなります。「長屋に十人の人がいりゃあ、十通りの騒ぎが起こる。その騒ぎに十人が首を突っ込むんですから、騒動は果てしなく広がるってわけで。でもね、騒動が丸く収まりゃ、十人が喜べる。しくじったら、悔しさや悲しみを十人で分けりゃいいんで」… なんとも含蓄のある言葉。これにつきますね。2024/06/01