内容説明
オルテガは、早くから現代が歴史上の一大転換期であることを見抜き、その危機の克服をめざして警鐘を鳴らし続けてきた。現代を大衆の時代と断定し、二十世紀の本質を衝いた名著。
目次
第1部 大衆の反逆(密集の事実;歴史的水準の上昇;時代の高さ;生の増大;統計的な一つのデータ;大衆人解剖の第一段階;高貴な生と凡俗な生、あるいは、努力と無気力;大衆はなぜあらゆることに介入するのか?しかも暴力的にのみ介入するのか?;原始性と技術;原始性と歴史;「満足しきったお坊ちゃん」の時代;「専門主義」の野蛮性;最大の危険物、国家)
第2部 世界を支配しているのは誰か?(世界を支配しているのは誰か?;真の問題は何か)
著者等紹介
ガセット,ホセ・オルテガ・イ[ガセット,ホセオルテガイ][Gasset,Jos´e Ortega y]
1883-1955。スペインの哲学者。マドリードの裕福な家庭に生まれる。マドリード大学を卒業後、ドイツに留学、帰国後マドリード大学の教授をつとめる。内戦後は、フランス、アルゼンチンなどに亡命。45年帰国し、著作活動を通してスペインの知的復興に力をつくす
桑名一博[クワナカズヒロ]
1932年生。1956年東京外国語大学卒。元東京外国語大学教授。スペイン語圏文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
16
西部邁が、大衆を政治に深く関与させる事の危うさについて、オルテガの本書をよく引き合いに出している。"大衆は安楽しか気にかけていないにもかかわらず、その安楽の根拠には連帯責任を負っていない、自分たちの役割は文明の恩恵だけを断固として要求することだと考えている"(p124)。一方でオルテガはヨーロッパのリベラリズムの頽廃を嘆きながらも、ヨーロッパを大国民国家として建設することでボルシェヴィズムに対抗できると考えていたようだ。読むほどに味わいが増していきそうな本。2017/10/27
こうず
6
オルテガが求めている物はニーチェ的な克己なのだろうかと感じた。権利ばかりで義務を果たそうとしない「大衆」なる存在。確かに合点が行きもしたけれど、天与の義務を見出せていないという点はカミュかぶれの自分には少し「?」感。国民国家に関しての論考には目を見張る。共生を前提とした同一目的へのダイナミズムは確かにその通りでもあろうが、留意すべきは本書がヨーロッパの危機に向けて著されたものであるということだ。世界が狭くなったとされる現代にとっても重みはあろうが、無批判に受け取るには少し課題が残る気がする。2010/12/08
植岡藍
5
「誰かがパスカルを引用したら用心すべきだということをかなり前に学んでいる。」すばらしい本だった。オルテガはヨーロッパについて書いているのだけど、現代日本にもそのまま通用する予言書のような本。大衆という概念を提示することで別の生き方を教えてくれているようにも読める。今後も折に触れて読みたい。2019/09/28
めっかち
4
オルテガは、義務を自覚せず、自分が平凡であると知りながらその平凡である権利を主張する者を大衆人、平凡人と呼ぶ。これに対抗できるのは、自分に義務を貸して、自己を日々鍛錬する「貴族」だが、ここでいう貴族は世襲に甘んじる愚鈍な人間でなく、優秀な人、努力する人だとも。その上で今日の社会を支配しているのが上記の大衆であり、その大衆の反逆として、共産主義と国家社会主義が現出したことを指摘する。これほどの正鵠を得た指摘を一九二九年にしていたとは……。オルテガはまさしく保守自由主義者であると言えよう。2023/08/09
Akiro OUED
4
第二次大戦前夜の大衆の反逆論は、地球温暖化による破局前夜の今、再登場した。発展途上国の人は、豊かになる権利を主張する。破局回避は、先進国の義務なのだ。ネットではびこる自由の横暴をオルテガは嘆かないだろう。彼の言説は、新聞紙上で展開されたのだから。熱い、夏の読書に不適な好著。2021/07/23
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