内容説明
キリスト教へと回心することで、「目からウロコ」が落ちたとされる伝道者―聖パウロは、初代教会の創設に尽力し、世界宗教への礎を築いた。本書は、彼の苦難に満ちた足跡を辿りながら、新約聖書に収められた使徒行伝や書簡集を読み解いてゆく。「異邦人への使徒」の真の姿に迫った、評伝の決定版。
目次
第1章 パウロの生涯についての資料―その枠組と年代
第2章 初期のパウロ
第3章 エルサレムとの断絶
第4章 独立した伝道者
第5章 教会指導者
第6章 和解を求めて
第7章 敗北して
第8章 パウロの思想
第9章 遺産
著者等紹介
加藤隆[カトウタカシ]
1957年生。ストラスブール大学プロテスタント神学部博士課程修了(神学博士)。現在、千葉大学文学部国際言語文化学科教授。神学・新約聖書学専攻
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感想・レビュー
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午後
4
聖パウロの生涯とその思想について、有力な学説といくつかの仮説を交えながら、慎重に著者の立場を表明していくその手つきに誠実さを感じた。第八章の、パウロ神学が後世に与えた影響についての考察がとくに有益だった。2022/10/30
たかさん
4
迫害するパウロから迫害を受けるパウロへその生涯と彼の書簡集などの解説が書かれている。聖パウロを知る上での入門書として最適ではないかと想うが『ローマ人への手紙』などは難解でそれぞれの解説書が必要と思える。2016/01/09
belier
3
パウロの活動と思想を初心者向けに紹介。著者は、パウロの活動はほとんど完璧な失敗としている。であれば、その名も活動も思想も忘れ去られそうなものだが、「キリスト教の創始者」はパウロだという人すらいる。なぜか。彼の弟子たちがパウロの教えを熱心に伝え続けたからだ。その甲斐あって、パウロの事績をドラマチックに脚色して伝えたルカの使徒行伝、パウロの手になる手紙群、弟子がパウロを模倣した手紙などが聖書におさめられた。興味深い。ただ、パウロの活動が完璧な失敗というのは、著者独自の見方かと思うがどうだろうか。2024/02/09
ひだりかわ
3
使徒行伝と書簡は読んでたけど、この本で初めてパウロの生涯の流れがわかったと思う。さらっと読みやすいけど、いくつもの議論が長年あったことにも触れられていて面白い。律法より心を大事にする彼の一貫した神学的態度はやはりすばらしいと思う。個別の話題としては、聖書中にも示唆はされているけれど、信仰の立場からはなかなか言われることはないであろう、パウロとペテロが最後まで対立していたことについてはっきり書いてあるのには驚く。特に、互いの共同体の対立による告発が、彼らが殉教する原因になったとする仮説はショッキングだった。2012/01/21
てっしー
2
聖書を読むための一つの思考の枠組みが与えられ、面白かった。このコンパクトさでは仕方ないが、作者がその主張の根拠とした他著からの引用ないし参考文献が、もう少しほしかったかな。(長年議論の的となってることを、結構スパっと断言しておられるので)2012/02/02