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内容説明
極限状態で呼び合う無垢な魂を切りつめた言葉で繊細につづるメディシス賞受賞作。
著者等紹介
マンガレリ,ユベール[マンガレリ,ユベール][Mingarelli,Hubert]
1956年フランス、ロレーヌ地方に生まれる。17歳より3年間海軍に在籍。その後、さまざまな職を転々とする。1989年デビュー。児童文学作家として活躍。1999年『しずかに流れるみどりの川』で本格的な中・長編小説の執筆を開始。フランスのグルノーブルに程近い山村でひっそり暮らしながら、毎年一冊のペースで小説を発表している。『四人の兵士』で2003年度メディシス賞受賞
田久保麻理[タクボマリ]
1967年東京生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
110
心に染み入るような静謐で美しい物語。ロシアの赤軍に参加した4人の若者の野営地での生活を淡々と描きながら、行間から深い哀しみが伝わってくる。戦争の残酷さをこれほど詩的に表現した物語は少ない。戦闘の場面が出てくるのはごくわずかで、それ以外は野営地での若者らしい生活が、陰影深く描かれる。彼らは必ず闘いに参加しなければならない。それを心に留めながら、日々を生きるときは、どんな些細なことであっても、輝いて見えるに違いない。実際に主人公のベニアが仲間たちに抱く親愛の情は、読んでいてほろりとした。結末は辛く悲しい。→2017/11/19
キムチ
52
佳作❕設定した・・とある時代背景は1919、しかもロシア赤軍での従軍の日々。日常といっても過酷極まる時間。だが綴られる文章が醸す世界は驚くほどに平和で穏やか。だがそれは彼らの何気ない精神力で作り上げられた虚構。あすは判らない4人の兵士。互いに氏素性を探ることなく「ちっぽけな喜び」を見出すことに時を紡ぐ。エヴァドキンの登場は画期的なくさびを打ち込んだ⇒文字❕記録を残す。。ラストに待ち受ける現実は昏い想いの余情で一杯にさせる。寓話ともつかぬ現実味のある文学。声高でないだけに文全体が散文的に胸に響く2019/11/24
キキハル
31
つかの間の休息の日々。宝物のような沼の静けさ。無聊を慰めるサイコロ遊び。農家から搾取する食べ物。品薄の煙草。女の写真が入った時計。かけがえのない仲間・・・。退却途中のロシア赤軍の青年兵士四人と志願兵の少年の物語は、淡々とした文章が軽めで悲壮感もなく不思議に明るい。はしゃぐのも楽しむのも、出発までの仮初めの憩だと分かっていたのだろう。それでも読み終わってみれば、ラストのやるせなさや無力感が、ページに重く立ち込めているようだった。2013/03/11
みねたか@
27
ロシア内戦。文字も読めない、まだ女性と一夜を共にしたこともない若者。そんな四人の赤軍兵士たちが、戦線に移動する前に過ごした、つかの間の満ち足りた日々を描く。戦闘に対する恐怖や、辛い長く厳しい冬の日々の悪夢。そんな一人で立ち向かうにはあまりにも辛い不安や記憶を抱える彼ら。だからこそ、思いを共にする仲間がそこにいる、それだけでどんなに救われ、光を見出せたことだろう。震えた背中にそっと毛布をかけるような優しさに満ちた世界が素晴らしい。そして、彼らのもとに配置された少年兵士のエピソードは、とりわけ切ない。2018/02/04
miyu
21
まさにこの季節にこの本を手に取ることが出来た偶然に感謝。誤解を怖れずに言えば「プライベート・ライアン」よりも「シン・レッド・ライン」が好きな人に是非読んでいただきたい。あらすじを伝えることなど無意味で虚しいが、あの映画に感動した人なら、この「四人の兵士」にも心震えるのではないだろうか。耐え難く思い出したくもないであろう戦争の最中であろうと自然はそのままに存在しているし、人の感情や想いも根っこの部分では変わらない。しかし好む好まざるに関わらず、曲げねば生きていけない瞬間がある。パヴェルの決断に胸が痛んだ。2014/08/16