内容説明
「月も朧に白魚の、かがりもかすむ春の空」の名せりふで名高い三人吉三。名刀庚申丸とその代金百両の行方が因果の糸をめぐらせ、和尚、お嬢、お坊の盗賊三人が義兄弟の血盟を交わす展開に、通客文里と遊女一重が織りなす廓の哀話がからむ。現代演劇の前衛にも資する、黙阿弥会心の最高傑作。
著者等紹介
延広真治[ノブヒロシンジ]
1939年生。東京大学文学部卒。江戸文学専攻。帝京大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドイツ語勉強中
2
中段まで(当然だが)しっかり描かれていて、序幕と大切しか観たことのない自分にも、人間関係や因果がよくわかった。芸談と解説は宝のようにありがたく読んだ。先人に敬意して長い時間をかけて編まれた書ということだ。こいつぁ春から!2023/02/18
酒井一途
2
廻り廻ったる百両の金と短刀の因果、明らかにされる血縁への驚愕。コクーン歌舞伎で上演されたものを映像で見て以来、歌舞伎とはこんなにも面白いものなのだと教えてくれた作品。改めて脚本で読むと、七五調の台詞が耳に響きよく心地良い。全幕声に出して読んだ。2012/11/05
nightowl
1
宝刀と金を巡る因果応報噺。ピンボールのように計算された展開と見せ場。合間のカットされることが多い文蔵一重の場では遊廓狂いで子供まで相手に産ませた夫にこんなにまでして尽くす妻なんていない、と思ったけれど木ノ下歌舞伎のクールな眞島秀和、どこかお嬢様で世間知らず感のある(もしかすると計算...?)緒川たまき夫婦ならあり得ると納得。2024/09/16
ぜっとん
1
これだけの複雑緻密な因果物語でありながら人物描写が見事になされているのは凄まじい。加えて言えば、科白廻しは鮮やかですっきりとして、掛詞、楽屋落ちの類いも楽しく鑑賞される。三人の吉三の悪は三者三様に、また文里一重の物語との平行のなかで効果的に描かれている。お嬢のみずみずしい強かさ、お坊の若くきっぱりして義にあつい悪漢ぶり、和尚の年季の入った重く鋭い悪のあり方がどれも大層格好よい。2012/12/01
れいちゃん
0
七五調だけでなく、掛言葉や縁語を巧みに駆使した台詞ひとつひとつにロマンがあった。また台詞だけでなく、如何にも逃れられない因果が絡み合ったストーリーにも胸が躍った。2016/01/30