内容説明
皇帝堅(文帝)が興した隋は陳を滅ぼし、ついに中国統一を成し遂げた。帝国の実権を狙う楊広(煬帝)にとって、最大の邪魔者は放蕩な皇太子である兄、楊勇。謀略の限りを尽くして、兄を廃そうと企む楊広は…。隋帝国の興亡史は、いよいよ破滅的ラストへ向かう。第1回歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞作。
著者等紹介
塚本青史[ツカモトセイシ]
1949年、倉敷生まれ。大阪で育つ。同志社大学文学部卒後、印刷会社に勤務しながらイラストレーターとして活躍。96年、『霍去病』で文壇デビュー。『煬帝』で、第1回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。父塚本邦雄が主宰していた短歌結社『玲瓏』の発行人も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
236
上巻とは別人としか思えないほどに、帝位についてからは光るものが何もなくなる楊広。この変貌を説明するために、楊爽の予知や透視といった要素を盛り込んだのかもしれないが、必ずしも成功しているとはいえず、納得感は薄かった。エロが権力へのモチベーションだったという楊広の人格設定の方はまだ説得力があり、帝になってからの弾けっぷりに期待もしていたのに、そこはそれほど描かれなかったのもどうだかなと思う。心の闇の掘り下げが今一つ。毎度ラストの畳み方が雑というか、急に史実の説明みたいになるのも、なんとかしてほしいところ。2023/03/07
金吾
32
兄を陥れ、父を殺して皇帝になったことはいろいろな書物で読んでいますが、その経緯が記された7章、8章は興味深かったです。皇族はなかなか幸福になれないなあと思いました。煬帝の暴れっぷりは知性を感じない状態なので悪辣さもなく、緊張感に欠けた話に思えました。2023/06/21
北之庄
10
聡明な次男として晋王に甘んじることなく、母皇后を欺いた上、兄皇太子と父文帝を弑虐し、いよいよ隋の二代皇帝として即位する楊広。以降、目的と手段を取り違えた彼の興味は、派手な行列や儀式、後宮での淫楽以外に興味を失い、臣民への苛斂誅求を繰り返す恐るべき暴君として君臨する。自身の手で降した南朝陳の先帝へ煬公と諡し冷笑する楊広。自身、後年楊帝として史上屈指の悪名高い帝として悪名を馳せるとは思いもよらなかったことだろう。テンポ良く一気呵成に読み進め、かつ最後まで息をつかせぬ良い作品でありました。2017/07/01
中島直人
5
(図書館)どうも塚本靑史さんの本は好きになれない。登場人物は薄い、かつ卑近下品に過ぎて感情移入出来ないし、無駄な伏線が多過ぎてまったく面白くない。2023/05/21
Mana
4
中国ドラマ「武則天」「独狐伽羅」で隋唐時代に興味が出てきた。読んだことはなかったけど、探してみたら意外とこの時代の小説もある。小説なので「隋の煬帝(宮崎市定)」で真偽が怪しいと書かれていたエピソードも盛り盛りだけど、やっぱり物語としてはそっちの方が面白いなって思う。途中からだんだん煬帝が無能になっていってしまうのが、前半は悪辣ではあっても無能ではない魅力ある人物だったのになんでだろうと思っていたところに、終盤の記載でふにおちる。あくまで小説だから実際は分からないけど、確かにそうかもと思わせるのが小説の力2020/06/17