出版社内容情報
序文
J.P.ウォマック & D.ジョーンズ
1996年の秋に“Lean Thinking”※1を出版した時,私たちは読者に対し,大野耐一氏※2の精神で「やるしかない!」(“Just do it!”)と急告しました.この本が英語版で10万部以上も売れ,読者からの電子メールやファクス,電話,手紙,改善成果レポートなどが続々と届くようになったことから,私たちは今や,多くの人々が私たちと大野氏のアドバイスを受け入れているのだと知ったのです.
しかし同時に私たちは,“Lean Thinking”の第11章で説明した改革のステップを読者のほとんどが順を追って踏んでいない ということに気がつきました.彼らはステップ1から3までは,うまくやっているのです.
1. チェンジ・エージェントを見つける(あなた自身はいかがか?).
2. よいセンセイを見つける(教師.あなたは彼の豊かな経験からラーニング・カーブを借りてくることができる).
3. 危機を利用して(危機がなければつくりだして)会社全体を動機づける.
しかし,ここで彼らはステップ5へ飛んでしまうのです:
5. 重要なテーマを選んですぐにムダとりをはじめる.そして,わずかな期間で大きな成果を得られるということに,あなた自身が驚く.
けれども,飛ばしてしまったステップ4は,実は最も重要なクリティカル・ステップなのです:
4. すべての製品ファミリーについて最初から終わりまでの全体の「バリュー・ストリーム」のマップをつくる.
不幸なことに,私たちのアドバイスどおりに,ムダとり実践に入る前に,このクリティカル・ステップを注意深く踏んでいる読者は,ごくごくわずかであることがわかりました.かわりに,あまりにも多くの企業が大々的なムダ廃除活動――「カイゼン運動※3」とか「継続的改善の積極展開」というような活動――へと一気に突き進んでしまっていることを発見したのです.この手のムダ廃除活動は,おのおのの製品の「バリュー・ストリーム」の小さな部分部分を固め,そして,そのコース沿いには価値はよりスムースに流れるようになります.しかし,価値の流れは,在庫という淀みに出会うとその流れを止め,下流へ向かってまわり道をします.こうなると結局のところ,真のコスト削減にも顧客に対するサービスやクオリティの改善にもつながらず,サプライヤーにとっての利益にもなりません.また,ストリームの全域にわたるムダだらけの基準値が「真の価値の島」を取り巻いているために,持続性もごく限られたものになり,そして,そこらじゅうがフラストレーションだらけになってしまうのです.
期待した成果が得られない「カイゼン運動」は,往々にして見捨てられたプログラムをまたひとつ増やすことになります.次にくるのは,(TOCに基づく)「ボトルネック排除」であったり,(最も見えやすい品質問題にねらいを定めた)「シックスシグマ・イニシアティブ」であったり……しかしこれらの活動は皆同じ結果をもたらします.つまり孤立したムダ退治は,その中にはとてもドラマティックなものもあるけれど,それでも全体を改善することはできない,ということです.
こうしたことから,リーン・エンタープライズ・インスティテュートの最初の「ツールキット」プロジェクトとして,リーン・シンカーたち※4がムダ廃除を着実に進めるのに必要な最も重要なツール,つまり「バリュー・ストリーム・マップ」を急いで提供する必要があると私たちは感じていました.著者のMike RotherとJohn Shookは,本書のなかで,あなたのバリュー・ストリームのそれぞれのマップを,どのようにしたらつくることができるか,そしてあなた自身,マネージャー,エンジニア,生産関係者,計画担当,サプライヤー,そして顧客に対して,このバリュー・ストリーム・マップが,価値に着目してムダと価値を分けムダを廃除することを,どのように教えてくれるのかを解説しています.
どのようなカイゼンの努力でも,またどのようなリーン生産の手法でも,リーンなバリュー・ストリームを構築するという文脈のなかで戦略的に適用されたときに最も大きな効果を発揮するのです.バリュー・ストリーム・マップによって,あなたは流れのなかで個々のプロセスを発見し,組織のしがらみからそれらのプロセスをとりだして,リーンの基本原則に則ったトータルなバリュー・ストリームを構築することができるようになります.バリュー・ストリーム・マップは,バリュー・ストリームに変化を起こそうとするとき,常に使わなければならないツールです.
私たちのツールキットプロジェクトはいつも,幅広いさまざまな実践と研究の経験を持つチームを求めてきました.Mike Rotherはトヨタを研究し,数多くのメーカーでリーンな生産の流れをつくってきました.現在彼はミシガン大学で教えています.John Shookは,トヨタ自動車に10年以上在籍し,その期間の多くを,「見る」ことをサプライヤーに指導して過ごしました.その後,Shookもまたミシガン大学のプログラムに加わります.両者とも,知識と経験――それは耐え難いほどの努力をして得られたラーニング・カーブ(学習曲線)です――というおそるべき強靱なボディを有し,そして今,その知識と経験を読者の皆さんと分かちあおうとしています.
私たちが“Lean Thinking”の読者ならびにリーン・エンタープライズ・インスティテュートの活動の参加者に望むのは,このマッピングツールを今すぐに,そして広く使っていただきたいということです.そして,どうしたらもっと良くなるかを教えていただければと思います.完成度を高めるための私たちの歩みに終わりはなく,そのためには,皆さんの成功事例を聞く必要があるのです.しかし,さらに重要なのは,成功例だけではなく,皆さんが困っている問題の本質について聞くことです.
繰り返し言いますが,「やるしかない!」のです.ただし,今度はバリュー・ストリームのレベルで,製品ファミリーごとに――最初は社内で,それから会社の外まで――.そして私たちに皆さんの経験を知らせて下さい.そうすれば,私たちはリーンネットワークの全員で,あなたの成功を分かちあうことができるのです.
序文 J.P. ウォマック & D.ジョーンズ
はじめに
PartⅠ:始めるにあたって・1
バリュー・ストリーム・マップを描くということ
モノと情報の流れ
製品ファミリーを選ぶ
バリュー・ストリーム・マネージャー
マッピングツールを使う
PartⅡ:現状のマップを描く ・11
現状のマップを描く
あなたの番です
PartⅢ:バリュー・ストリームをリーンにするには・39
つくりすぎ
リーンなバリュー・ストリームの特徴
PartⅣ:将来のマップを描く・55
将来のマップを描く
あなたの番です
PartⅤ:将来のマップを実現する・83
実行のステップ分け
バリュー・ストリーム実行計画
バリュー・ストリームの改善はマネジメントの責務
むすび
著者について
付録A:バリュー・ストリーム・マッピング・アイコン
付録B:「TWI工業」の現状マップ
付録C:「TWI工業」の将来マップ
訳者あとがき"
目次
1 始めるにあたって(バリュー・ストリーム・マップを描くということ;モノと情報の流れ ほか)
2 現状のマップを描く(現状のマップを描く;あなたの番です)
3 バリュー・ストリームをリーンにするには(つくりすぎ;リーンなバリュー・ストリームの特徴)
4 将来のマップを描く(将来のマップを描く;あなたの番です)
5 将来のマップを実現する(実行のステップ分け;バリュー・ストリーム実行計画 ほか)
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