出版社内容情報
《内容》 数年ぶりに本書を改訂します.基本を書いた本で大きな変化は必要ないのですが,それでも時代に合わなくなった点も少しみつかりました.1999年6月帝京大学教授 諏訪邦夫初版の序「血液ガス」を多くの医師,検査技術,ナースなど広い方々に理解して頂くべく,図を中心に分かり易く解説した.“血液ガスとは”,“血液ガスの測定”,“血液ガスの臨床使用”の3部構成で,読者の関心に応じて,どこから読んでも,又,丁寧によまなくとも理解できるよう説かれている.小冊子ながら第一人者が,巧妙に著わした“血液ガス”のマスターのためのエッセンスである.はじめに “血液ガス”に取り組んだのは,医師になって間もなくの1963年ころです.以来4半世紀以上が経過しました.その間,永い休みはなく継続してこのテーマを勉強してきています.その位,血液ガスは面白いものです. それにしても,測定器も使う知識も随分と進歩し普及したものです.「血液ガスの臨床」を書籍として出版したのは1976年ですが,この時点では全自動分析装置は販売され始めたばかりでした.したがって,書物そのものは手動の装置を基礎として執筆しました.各種の計算手法としても,当時の花形“電卓”を推薦しています.温度補正は装置自体は行なってくれず,ノモグラムをよく使ったので,原理のみでなく使用法まで詳しく説明しました.大型コンピュータで作った温度補正表も添付しました.当時は,パソコンなど実物はもちろん概念さえも存在しませんでした! その後,さらに基本的でわかりやすいものとの要望に応える意図で,「血液ガストレーニング」を出版しています.これも多数の方々にお読み頂いて嬉しいことです. 毎年,多数の医師・ナース・検査技師の方々,その他の方々も含めて,この領域に興味をもつ方々が増えています.著者としても,これまで書籍のみでなく雑誌の解説論文や各種の講義講演などを通じて随分努力を重ねてきているつもりですが,それでも満足できるレベルには達していませんし,知識と認識をひろめる余地も残っています. 「血液ガストレーニング」以上にわかりやすく実戦的なものを,という考えは中外医学社とも話し合ってプランしていましたが,血液ガス測定装置を製造販売しているチバ・コーニング社からの依頼を契機に今回決断しました. 本書の特徴として,“図を中心に作成した”点を上げます.一般の情報交換でももちろんですが,“血液ガス”にはとくに図が必要だからです.この試みは総じて成功したと思います.もっとも,著者自身に“漫画を描く能力”がないのが残念です.別に出版した「麻酔の科学」(講談社,ブルーバックス)のように,基本的に漫画中心の出版物と異なり,医書の場合は読者も出版社も“漫画”になれない分だけ著者からも注文が付けにくいからです. 中外医学社と青木社長,とくに永年の盟友である荻野邦義氏には今回もいろいろとお世話になりました.またチバ・コーニング社の安田博文氏は本書成立の直接のきっかけを作って下さいました.ここにしるして感謝の意を表します.1990年初頭諏訪邦夫著者連絡先:東京都文京区本郷7-3-1 東京大学医学部麻酔学教室電話(03)815-5411 ファックス(03)5684-0218本書の使い方 本書は,“第1部 血液ガスとは”,“第2部 血液ガスの測定”,“第3部 血液ガスの臨床使用”の3部からなっています. 本書は,「始めから順序よく読んでわかる」ように書いたつもりです.本を読むのに「真面目に始めから順序よく読む」人が多いでしょうが,本書はそれでわかりやすいはずです.その場合でも,あまり“丁寧に”は読まないで下さい.わかりにくいところは遠慮なくとばして読んで下さい.“わかりにくいのは読者が悪いのでなく,書いた著者が悪い”と思って頂いて結構です. 読者の基礎知識も,対象となる装置や患者や測定条件なども,一人一人異なります.一部の方々にとって,私の記述は不必要にくどいでしょうし,逆に簡略に過ぎたりもするでしょう.とにかく“血液ガスとはなにか”を漠然と頭に入れて下さい.それから細かい記述に戻って下さい. 血液ガスそのものの概念や測定のことは知っているが,患者や人体との関係をもっと知りたいという方は,いきなり第3部に挑んでもよいでしょう.文章を描く際に,実例から入るのが私は好きで,例えば“血液ガストレーニング”ではそうしました.本書ではもっと標準的な「基礎から積み上げる」方式をとりました.しかし,ある程度基礎のある人なら実例の方が興味深いでしょう. “知識”だけを身につけるのなら,どこから読んでも一度読めば同じことでしょう.しかし,血液ガスの問題は単純な“知識”ではありません.もっと深い,“認識”が必要です.そのためには本書も全体として何回か読まれることを予想しています. 巻末の文献は,私のものが中心となっていますが,これは他の方々のものを無視するという意味ではありません.“この本が気に入って同じ著者のもっと突っ込んだものを読みたい”という方のために,私の本を上げたのです.血液ガスに関する本は他にもあります.それは店頭なり図書室なりで十分検討して頂くようにお願いします. 《目次》 目次第1部 血液ガスとは1 “血液ガス”と“血液ガス分析”の意味は 22 血液ガスの正常値は 43 ガスの“濃度”と“分圧”とは 54 血液の酸素“分圧”とは 75 血液の酸素の“量” 86 血液の酸素“飽和度” 97 何故“分圧”を使うか 108 血液ガスの“1次パラメーター”と“2次パラメーター” 129 動脈血血液ガスの異常値の意味 1310 酸素解離曲線 1411 酸素解離曲線の憶え方 1612 酸素解離曲線の移動 1713 酸素解離曲線の極端な移動 1914 酸素飽和度と酸素含量の関係 2115 炭酸ガスの分圧と含量 2316 重炭酸イオンを炭酸ガスに入れる場合と入れない場合 2417 炭酸ガスのmEq/lとvol%の関係 2518 炭酸ガス解離曲線 2719 血圧ガス値の基礎:酸素摂取量と炭酸ガス呼出量との関係 2920 ハイポキセミアのいろいろ 1 3121 ハイポキセミアのいろいろ 2 3322 肺の血液酸素化能と評価 3423 肺胞気酸素分圧と動脈血酸素分圧とは一致しない理由その1.理想的な肺 3624 肺胞気酸素分圧と動脈血酸素分圧とは一致しない理由その2.効率0%の肺 3725 効率の評価と実際の肺 3826 酸素化良好な肺と酸素化不良な肺 4027 シャントとPaO2 4228 PaCO2と換気量 4429 炭酸ガス呼出能とはなにか 4630 死腔の代表-気道部分の換気 4831 呼吸死腔の基本的な考え方 4932 pHと酸塩基平衡 5133 呼吸性酸塩基平衡異常と非呼吸性(代謝性)酸塩基平衡異常 5234 呼吸性酸塩基平衡異常とpHの変り方 5435 代謝性酸塩基平衡と重炭酸イオンの変り方 5536 複合異常と“代謝” 5637 水素イオンの大きさと活動性 5838 血液ガスを利用した二次パラメーターの使い方と意義 60第2部 血液ガスの測定1 採血と検体取り扱いの注意 622 採血の状況を記録すること 623 アレンのテスト-橈骨動脈と尺骨動脈の吻合を確認するテスト 634 動脈穿刺と動脈カテーテル挿入のこつ 645 毛細管血や静脈血で得られる情報 676 ヘパリン溶液によって血液サンプルはどの位希釈されるか 687 採血時に強く引くと真空でガスが逃げて誤差を生む 708 気泡が入ったらソーット追い出す 729 注射器の材質(プラスティック,ガラス)の影響 7410 温室放置による数値の変化 7511 時間がかかりそうならサンプルを冷やすのが有効 7612 酸素電極の構造とPO2測定の原理 7813 炭酸ガス電極の構造とPCO2測定の原理 8014 pH電極の構造とpH測定の原理 8115 血液ガス値の温度補正 8216 ケルマンとナンの温度補正ノモグラム 8417 コンピュータによる血液ガスデータの解析 8618 血液ガスとコンピュータの相性 8719 コンピュータによるデータの視覚化 8920 コンピュータによる血液ガスの教育 9021 血液ガス学習プログラム 91第3部 血液ガスの臨床使用1 血液ガスの問題の具体例を上げながら、いろいろ勉強していこう 942 数値が正常でも機能が正常とは限らない 963 一般検査のPaO2は“ノーマル”過ぎる 984 この患者の術前の問題 1005 肥満者のPaO2と体位 ・麻酔 1026 肥満者のPaO2が麻酔時に低下する条件 1037 肥満者のPaO2は麻酔時に何故低下するのか 1048 PaO2は測らねば分からない 1069 術直後の呼吸不全 10710 パルスオキシメーターの価値 10811 術後呼吸不全 11012 高山病 11213 ハイポキシアと頭痛 11314 ハイポキシアによる利尿と乏尿 11415 高山病の予防と治療 11616 高地順応 11717 アセタゾルアマイド(ダイアモックス)の働き 11918 高山病の治療 12119 喘息発作と血液ガス その1 12220 喘息発作と血液ガス その2 12421 “低換気と過換気”は換気の“量”でなくPaCO2で定義 12622 死腔とPaCO2上昇 12823 スワン-ガンスカテーテルと混合静脈血の採取 13024 心停止による静脈血のPCO2上昇 13125 VE×PaCO2(VPP) 13226 ARDSと血液ガス 13327 肺気腫と血液ガス 13528 人工呼吸器のセッティングと血液ガス 136参考図書と参考文献 139索引 143
目次
第1部 血液ガスとは(“血液ガス”と“血液ガス分析”の意味は;血液ガスの正常値は;ガスの“濃度”と“分圧”とは ほか)
第2部 血液ガスの測定(採血と検体取り扱いの注意;採血の状況を記録すること;アレンのテスト―橈骨動脈と尺骨動脈の吻合を確認するテスト ほか)
第3部 血液ガスの臨床使用(血液ガスの問題の具体例を上げながら、いろいろ勉強していこう;数値が正常でも機能が正常とは限らない;一般検査のPaO2は“ノーマル”過ぎる ほか)
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- 和書
- オ~イ!つまみできたぞ