出版社内容情報
なぜ後を絶たないのか、行き着く先に何があるのか。背後に広がる「構図」を描く。
粉飾行為は極悪人の手によって密室で行われたというような性質のものではない。粉飾をめぐる光景を等身大の全体像として捉えなければ、それが持つ負の側面についてリアルな意味では分からないし、今後の処方箋も書けない。粉飾には数多くの関与者がいる。なぜ粉飾は後を絶たないのか。その末路とは。カネボウ、メディア・リンクス、ライブドアなどを事例に、粉飾にいたる系譜と構図を明らかにする。
目次
第1部 カネボウの罪(秘密工作;隠蔽;源流)
第2部 メディア・リンクスの罰(循環取引;地下迷宮;破滅)
第3部 監査法人の死(苦悩;破産会計士;衝撃)
著者等紹介
高橋篤史[タカハシアツシ]
1968年愛知県生まれ。93年早稲田大学教育学部卒業。日刊工業新聞社を経て98年から東洋経済新報社記者。以来、建設業界などの取材にあたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masabi
13
【概要】カネボウ、ライブドアを中心に粉飾決算で暗躍する勢力を解説する。【感想】メインバンク制を背景とするカネボウ、株式市場を背景とするライブドアの粉飾スキームを解説する。事業が暗礁に乗り上げるとどこからともなく上場企業を食い物にしようとする面々が現れるのが印象的だ。暗礁に乗り上げた経営者の脇の甘さから魑魅魍魎が入り込み、エクイティ・ファイナンスを駆使し企業の継続を度外視した搾取する。そして、企業は崩壊し、次の獲物を探し始める。2019/05/03
たか
5
カネボウ、ライブドア、メディアリンクス等の粉飾事件を取材した本。粉飾は企業担当者が行う会計上の不正な操作という理解だったが、この本を読んで認識を改めた。社会はシロかクロかのはっきりした世界ではなく、実際にはその間にグレーな広がりがある。少しの弱みからウラの人脈が入りこみ、気づけば取り返しのつかない事態になっている。監査法人側にも馴れ合いや利害で不正を追及しないケースがあったようだ。悪人と言いきっていい登場人物もいたが、多くは巻き込まれるような形で足を踏み入れ戻れなくなったような人が多く、他人事と思えない。2023/05/05
茎沢
4
旦那が大昔に買ったらしい本。難しいこと書いてるけどわりと読みやすかった。これは多分この本が分かりやすいというわけではなく、翻訳版のSF小説をたくさん読んだ後だと日本人の本ってだけで読みやすい、という現象が起こっているだけだと思われる。粉飾できるくらい頭が良い、のではなく、やばい、バレる、危険、と思った時点で止められないのが頭悪い。2017/12/05
RYU
4
ジャーナリストによる粉飾事例の内幕ルポ。主に、カネボウ(備蓄取引)、メディア・リンクス(架空循環取引)、ライブドア(自社株売却益還流)が取り上げられている。粉飾の原資という観点からみると、カネボウとメディアリンクスは銀行からの借入金だったが、ライブドアは一般株主から集めた小口資金。「ゲーム感覚」のライブドアはより罪深く映る。2016/09/18
horihorio
4
少々古いものの、粉飾決算の手口の解説と、それをした背景の解説が詳しい力作。(粉飾決算を推奨する訳ではないが)本書を考えながら読む事で、会計クラック手法の勉強や、会社組織の論理を垣間見る事が出来た。会計中級者以上にオススメしたい。2011/12/25