出版社内容情報
第1回創元SF短編賞受賞作収録
〈北の街〉のふるい総合大学。
ここには今日も、小さな不思議があふれている。
『シュレーディンガーの少女』
『山手線が転生して加速器になりました。』などで
注目を集めるアイデアSFの名手・松崎有理のデビュー作
舞台は〈北の街〉にある蛸足型の古い総合大学。語り手の女子学生と同じ生命科学研究所に所属する幼馴染みの男子学生が、一心不乱に奇妙な実験を始めた。夏休みの研究室で密かに行われた、世界を左右する実験の顛末は? 第1回創元SF短編賞を受賞した表題作をはじめ、少し浮世離れした、しかしあくまでも日常的な空間――研究室を舞台に贈る、大胆にして繊細なアイデアSF連作全6編、新装版。
内容説明
〈北の街〉にある総合大学を舞台に起こるSF事件の数々。生物学実験室では遺伝子実験が思わぬ終末をもたらし、数学科ではリーマン予想に挑む研究員が悲しい恋を迎え、文学部社会学科では「幸運・不運」予測が幸せを運んできて、大学病院の地下迷宮では夏休みの小学生たちがイマジナリー・フレンドと出会う。第1回創元SF短編賞受賞作に始まる松崎有理のデビュー作品集を新装版で贈る。
著者等紹介
松崎有理[マツザキユウリ]
1972年茨城県生まれ。東北大学理学部卒。2010年「あがり」で第1回創元SF短編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Shun
31
松崎有理デビュー作の短編集新装版。著者の作品は3冊目になりますが、本作では同じ街そして同じ大学内での物語という特徴があります。著者の専門であるためか出てくる用語や理論は極めて専門的でどこからSFなのか判然としない部分はありましたが、大学または大学院という一応特殊な環境での日常の光景とフィクションが見事に融合した小説となっています。大学を舞台としたミステリやSFは数多くあれど、この作品ほど大学内での研究や日常生活に密着して書かれた小説は読んだことがない。論文執筆自体をテーマにした作品というのも面白い。2025/05/17
イシカミハサミ
17
日本列島の北の方にあるとある大学と その周囲の町を舞台にした連作短編集。 仮説・実験・実証にSFを少々。 時系列を使った仕掛けも少々。 個人的には文庫が絶版で手に入らなかった 代書屋のミクラくんに会えたので、 非常に満足できました。2025/06/02
c3pomotohonzuki
1
細胞の大量増幅、偶然の数式化、遺伝子の行方。 北の街の大学を舞台に繰り広げられる研究者の営みは少し不思議な非日常で。 日常としてそれを受け入れている彼ら彼女らの短編集。 静かにわくわくし、少し切なく苦い、そんな読後感。 「研究とは物語を語ることに似ている」2025/06/07